静岡の干物店強盗殺人事件 1審死刑から無罪主張 弁護側が「新証拠」提出 犯行時間帯の現場付近に第三者の影
産經新聞:2017.12.28 20:09更新
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 静岡県伊東市の干物販売店で平成24年、女性社長と男性従業員を殺害して現金を奪ったとして、強盗殺人罪に問われた元従業員、肥田公明被告(65)の控訴審が、29年11月から東京高裁(大島隆明裁判長)で開かれている。
事件は物的証拠が乏しく、1審静岡地裁沼津支部の裁判員裁判は状況証拠から肥田被告を犯人と認定し、死刑判決を言い渡した。
しかし、控訴審直前に検察側が捜査報告書を開示。弁護側は「第三者が現場付近にいた可能性を示す新証拠」と位置づけ、「真犯人は別にいる」として改めて無罪判決を求めている。

200点近い証拠開示

 「事件当日に店を訪ねて血まみれの2人を見つけ、怖くなって逃げた」。肥田被告は一貫して無罪を主張している。
控訴審の弁護団は検察側に証拠開示請求を3回行ったが回答はなく、29年7月に控訴趣意書を提出。その後、検察側から200点近い証拠が任意で開示されたという。

 このうち弁護団が特に重視するのは、犯行時刻に近い24年12月18日午後9時ごろ
「干物店の駐車場前にヘッドライトをつけた車が駐車され、2人の人物が立っていた」
「干物店の2階部分に電気がついていた」とする目撃者への聴取報告書だ。
実際に、9時10分ごろ、駐車場付近と店舗2階付近に明かりがついているとみられるタクシーのドライブレコーダー画像も開示された。

 このほか、7時ごろ、肥田被告の軽乗用車とは違う普通乗用車が、「駐車場から道路へ急発進してきた」とする別の聴取報告書もあった。
聴取報告書の内容はいずれも静岡県警が事件から数日後に聴取したものという。

 1審判決が認定した犯行時刻は「午後6時ごろから9時ごろまでの間」だ。弁護団はこれらの証拠を控訴審で取り調べるよう求めており、認められれば、高裁が証拠をどう評価するかが重要な焦点になるとみられる。

来月に被告人質問

 弁護団の趙誠峰弁護士は29年11月17日の初公判後の会見で
「真犯人の存在をうかがわせる重大な事実。犯人性を争う事件で、検察側からこれらの事実が出されないまま1審が進められたのは大きな問題だ」と訴えた。

 一方、検察側は「1審判決に事実誤認はない。被告が犯人であることは揺るぎない」として控訴棄却を求めている。
聴取報告書などを1審で開示しなかった理由としては、弁護側が自らの主張と関連する証拠として開示請求を行わなかったことなどを挙げている。

 第2回公判は30年1月12日で、被告人質問が予定されている。

●静岡・干物店強盗殺人事件 平成24年12月、静岡県伊東市の干物販売店「八八ひもの」の業務用冷凍庫の中で社長の清水高子さん=当時(59)=と従業員の小淵慶五郎さん=同(71)=が血を流して死亡しているのが見つかった事件。
静岡県警は25年6月、元従業員の肥田公明被告を強盗殺人容疑で逮捕した。

 凶器などの直接証拠がみつからず、1審静岡地裁沼津支部の裁判員裁判は28年11月、肥田被告が殺害時刻と極めて近い時間帯に約40分間店内に滞在し、店からなくなったのとほぼ同額の硬貨を事件直後に預金していたことなどから犯人と認定し、死刑を言い渡した。