http://www.sankei.com/smp/life/news/171231/lif1712310011-s1.html

 厚生労働省がまとめた「日本創薬力強化プラン」の全容が30日、分かった。「創薬大国」を実現するため、革新的な新薬を創出する環境整備を進め、国際的競争力を強化するのが狙い。約2人に1人が罹患(りかん)するがんでは、遺伝子情報を基に治療法を選ぶ「ゲノム医療」を推進するため、厚労省はゲノム治療を行う医療機関を「がんゲノム医療中核拠点」に指定するほか、中核拠点が解析したゲノム情報を集約・管理する「がんゲノム情報管理センター」を整備し、治療薬開発にも役立てる。

強化プランは主に、研究開発環境の改善▽コスト低減と効率性向上▽日本発医薬品の国際展開の推進▽ベンチャーの創出−で構成される。厚労省と内閣府は、平成29年度補正予算案と30年度当初予算案で総額約830億円を確保し、29年度から順次作業に着手する。

 ゲノム医療の推進は、研究開発環境の改善の柱となる。がんは昭和56年以降、死因の1位で、平成28年の新たながん罹患者数は約100万人に上る。

 日本のがんゲノム治療は欧米より実用化の取り組みが遅れている。臓器別の治療よりも、各患者の遺伝子変異に基づく治療が進めば、患者にとってはより最適な治療を受けることができる。

 強化プランには、革新的な医薬品を早期に承認することで、世界に先駆けて実用化させることも盛り込んだ。治験先進国を目指す。

 このほか、医療系ベンチャーの資金調達環境の改善を明記した。世界で一番多く新薬を創出する米国を支えているのがベンチャーといわれている。ただ、新薬を創出するまでに長期間、多額の資金を要し、ベンチャーにとって資金確保は深刻な課題となっていた。

 新薬の創出をめぐっては薬価制度改革として、画期的な新薬を高値で維持する「新薬創出加算」の適用対象について、貢献度が高い上位25%の企業に制限することになった。

 これまでは新薬を創出すればほぼ全ての企業に適用されていたことから、米国研究製薬工業協会(PhRMA)などは「新たな医薬品を日本で創出するインセンティブ(動機付け)が損なわれ、日本の患者が新薬を早期に使用することが難しくなる」と懸念を表明している。

 これに対し厚労省の担当者は、医療系ベンチャーへの支援を行うことで「薬価制度改革の痛みを吸収できる」としている。

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