“言葉の百科事典”とも言われる「広辞苑」が10年ぶりに改訂され、今月12日に出版される。<へそくりは妻の読まない広辞苑>なんて川柳を新聞の片隅に見たことがあるけれど、広辞苑を開かないのはもったいない。岩波書店辞典編集部副部長で辞書編集歴20年余の平木靖成さん(48)に聞いた、広辞苑の知られざる魅力とは…

■言葉の歴史がわかる辞書

 「日本語を習いたての外国人の方には勧めませんね」

 平木さんのこんな一言に一瞬、面食らった。

 数々の国語辞典の中で「広辞苑」ならではの特徴を一言で言い表して、と頼んだ時の平木さんの返事がこれだったのだ。

 す、すすめない、ですか?

 「ええ。例えば、『やさしい』という言葉を引くとしましょう。広辞苑では最初に『身も痩せるように感じる。恥かしい』と書かれています。そういう辞書なんです」

 実はこれ、「広辞苑」の大きな特徴の一つという。言葉の本義を冒頭に記す、つまり一つの言葉について複数の使われ方が派生した場合、現代の使われ方を優先するのではなく、元々の意味から順番に記すのが広辞苑の鉄則なのだ。

 この点は、収録項目数で差のない中型辞典「大辞林」(三省堂)とも大きく異なる。「大辞林」では逆に、現代社会で一般的に使われている意味の方から記していく。だから、例えば「やさしい」は「穏やかで好ましい」や「思いやりがあって親切だ」という意味が最初の方に書かれている。

 平木さんが「日本語学習初心者には勧めません」というのも、そういうわけ。日本語を習いたての外国人が恥ずかしい時に「やさしい! やさしい!」と叫んだら大変だから。

 でもこの点こそが、広辞苑の矜持(きょうじ)でもある。「広辞苑を引けば、それぞれの言葉の持つもともとの意味や概念、そして使われ方の歴史が解き起こされるのです」。平木さんは誇らしそうにこう言うのである。

 今月発売される広辞苑第7版は、普通版が9000円(6月30日まで8500円)。字を大きくし、2冊+付録の計3冊を1組みにした机上版は1万4000円(同1万3000円)。収録項目は、基礎語や日常語から外来語、専門語、そして新語や地名人名まで約25万語。このうち約1万語が今回の新規収録分だ。全部で3216ページ。付録も入った箱の厚さは10センチ、重さはなんと3・3キロ……漬物だって漬けられそうだ。

 もっとも、こんな「広辞苑」ですら、辞書の分類では「中型辞典」。ちなみに日本の国語辞典の世界で「大型」に分類されるのは「日本国語大辞典」(小学館)だけ。こちらは別巻1冊を含め全14冊、収録項目は50万語、100万用例なんだとか。

■「ほぼほぼ」は落選

 広辞苑にはもう一つ、大きな特徴がある。それは、「定着した言葉だけを選ぶ。最先端の言葉を勇み足で採用しない」という点だ。

 例えば、今回の第7版で新たに収録することになった項目の中で、時代を映した現代語にはこんなものがある。

 「いらっと」「上から目線」「お姫様抱っこ」「口ぱく」「小悪魔」「ごち」「婚活」「自撮り」「勝負服」「乗り乗り」「無茶振り」

 これらのうち「口ぱく」「ごち」「勝負服」「乗り乗り」は、「大辞林」の場合、10年以上前の2006年改訂版にすでに収録されている。

 広辞苑第6版が10年前に改訂された時には収録が見送られたが、今回、十分に定着したと判断され、第7版で収録されることになったのは、「エントリーシート」「がっつり」「クールビズ」「コスプレ」「モラルハラスメント」など。

 逆に、今回も見送られたのは「アラサー」「アラフォー」「アラフィフ」「がん見」「ググる」「つんでれ」「ディスる」「ほぼほぼ」「ゆるキャラ」などだ。

※以下省略 見出しのみ 全文はソース先で

■秘伝のタレ
■新語入りから見る歴史
■消えた言葉も落としません!
■戦火に燃えた原稿と版下
■左手で持てなくなったら筆を折る
■辞書編集、というお仕事
■収録されてうれしかった言葉は?
■ヌード写真集より売れた!

毎日新聞 1/4(木) 17:58
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180104-00000003-maiall-soci

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