髪染めのヘアカラーにかける年間のお金で、甲府市が全国1位になった。同市内の美容業界関係者を取材すると、女性で白髪染めをする人の数が多いことや、若者が明るい色で染める傾向があり、使用量が多いことが分かった。甲府市民が髪に気を遣う理由とは?

 調査は総務省の家計調査。県庁所在地・政令指定都市を対象に、平成26〜28年平均を求めた。

 それによると、甲府市は、ヘアカラーリング剤への年間支出額は2278円で全国1位。これに、大分市、高知市などが続く。

 分析を試みようと、まずはドラッグストアを取材した。ツルハドラッグ甲府朝気店(甲府市朝気)の店員は「レジを打っていてカラーリング剤の購入者が多いと感じる。40〜70代で白髪染めが多い」と話す。

 プロに毛染めを委ねる人たちの動向はどうか。「ヘアルーム More」(同市千塚)の美容師、輿水亮一さん(31)に聞くとは、「白髪のある40代以上のお客さまはほとんど白髪染めをしている」と指摘する。

 県内の美容室向けにヘアケア用品を扱うBE・ナショナルの河西健・山梨支店長(45)は、甲府市の美容室は「白髪染めをする客の割合が全国平均の倍近い」と強調、「市内で白髪の高齢者をほとんどみかけない。服は質素でも髪に気をつかう気質が昔からあるとも聞いている」と話す。

 美容室に来ていた韮崎市、会社員、田中康子さん(46)も「甲府盆地の市町村は昔から『無尽』が盛んなように人間関係が濃密。だから、女性が人目を気にしてヘアケアに気を遣うのでは」と推測する。

 無尽とは、さまざまな結びつきで親しくなった仲間と、定期的に集まる飲み会だ。

 では、若い人はどうか。輿水さんは「美容院の顧客の特徴にもよるが、若い子でカラーリングする人は東京より明るめの色で染めている傾向がある」とみている。

 明るく染めると髪の毛の根元が伸びると黒が目立つので、何回も染める必要があり、必然的に消費量が多くなるという。こうした傾向は家庭用のカラーリング剤の消費にも当てはまるかもしれない。

 さらに、市内で出会った金髪に染めている20代男性は、「東京に近いわりには流行にタイムラグがあり、東京では少なくなった明るいカラーリングをする人がまだいる。自分もそうですが…」とはにかんだ。

 消費行動に詳しい山梨学院大経営情報学部の野村千佳子教授(経営学)は「服は東京に買いに行くが、美容院の数が多く価格が安いので、ヘアケアは市内で行うケースが多いと聞いた」と話す。その上で「甲府市特有の盆地の地形も関係しているのでないか」と興味深い問題提起も。

 野村教授は「四方が山に囲まれ冬は寒さが厳しいため、明るめに染めて気分を明るくしたいのでないか」と推測する。

 日々寒さが増す甲府盆地。明るいカラーリングがさらに増えていくか。街行く女性が一層気にかかる。

1/13(土) 14:17配信
産経新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180113-00000523-san-soci