■「30年間一括借り上げ」の甘い罠

 もともと安定した入居率が期待できる立地のアパートや当初から現実の入居率を見据えた資金計画であれば、借り上げ契約が解除されてもそこまでオーナーも追い詰められることは少ない。

 しかし、そもそも賃貸需要がそれほどあるのかと疑うような立地でもアパートが建設されてしまうのも、「30年一括借り上げ」という甘い言葉のなせる業なのである。

 一般的なアパート経営を行う場合、まずその立地の賃貸需要(入居者がどれだけいるか)を調査し、単身者向けやファミリー向けなどその需要に合わせた建物を採算の取れる範囲内の金額で建設して運営していくものだ。この場合、当然、将来建物の劣化に伴って家賃は下がっていくため、家賃の減少まで考慮してアパート経営の計画を立て、採算が合わないようなら投資を断念する。

 ところが、アパートオーナーになるにもかかわらず、「30年間はこちらで借り上げるので、入居者の有無にかかわらず家賃は入ってくるから安心していい」という営業のセールストークを鵜呑みにして、賃貸需要をまったく考えずに建設してしまうことになる。

 一方、当然ながらアパート経営を提案する事業者(レオパレス21のような企業)であれば、その立地の賃貸需要の予測はできているはずだ。特に、提案する事業者が一括でアパートを借り上げる場合、入居者がなければ、オーナーへ支払う家賃によって逆ザヤ(マイナス)になってしまうので、本来はより慎重に入居者の確保ができる立地を選び、少なくとも近くのアパートで激しく入居者の奪い合いをするような立地は避けるのが普通だ。

 そう考えると、近隣で何棟もアパートを建設し、すべてを借り上げれば、近い将来それらのアパートでは入居者が減り、いずれも事業採算上マイナスになることは、事業者としては当初からわかっていたはずである。そして、レオパレス21の場合は、実際に数年でオーナーへ支払う家賃の減額や借り上げ契約の解除を迫るのだから、計画的といわれても仕方がないだろう。

 ましてや現在のように人口減、少子化の時代であれば、特に郊外型のアパートの需要がどれほどあるのか、さらに30年という長い期間を考えれば、将来はもっと厳しいアパート経営環境になるのは明白であり、「30年一括借り上げ保証」という言葉が非常に危ういものに聞こえてくる。

■「30年一括借り上げ」以外にも問題点

レオパレス21のような、アパート建設から請け負い、完成後の一括借り上げまで行う事業者では、建設の時点で相当の利益を上げていることも特徴的である。

 たとえば、建設費2000万円程度でも十分利益が取れる木造アパート一棟の建設を、4000万円程度で土地のオーナーから請け負い、最初の時点で2000万円以上の利益を上げるのである。特に、ほぼ同じ仕様のアパートを数多く建てるような事業者の場合、同じ規格で大量に発注できるため、建築コストは非常に安く抑えることができる。それを一般的なアパートより高い建設費で請け負うのだから、土地のオーナーにしてみれば相当高い買い物をさせられていることになる。

 また、この建築請負で得た利益の一部で、数年間の借り上げ費用(オーナーに支払われる家賃)が捻出されていると考えれば、オーナーは自分で支払ったお金の一部が返ってきているにすぎないともいえる。

 実際に以前、神奈川県小田原市の土地オーナーから、ある一括借り上げ型のアパート経営を提案する企業からの見積もりを見せてもらったことがある。その建築費は相場から見ておおよそ2倍の建築費だったことを鮮明に覚えている。

 また、その時見た提案では、当時土地付きの建売アパート(土地と建物を一括して購入するアパート)投資でも表面利回り(年間の家賃収入÷土地建物の売買価格)8%で購入できる時代に、土地はオーナーの所有で建物のみ建設する提案にもかかわらず、表面利回り(年間家賃収入÷建物建築費)が8%という提案だったことも強く印象に残っている。土地代のかからないアパート経営であれば、12%以上の提案になっていてもおかしくないのにである。