アフガニスタンの首都カブールの丘にある墓地で、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が犯行声明を出した爆弾攻撃の犠牲者41人の中の1人の埋葬に立ち会う人たち(2017年12月29日撮影、資料写真)
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【1月15日 AFP】アフガニスタンで中産階級出身のイスラム過激派が、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の同国東部から首都カブールへの勢力拡大を支えていると複数の専門家が指摘している。

 ISは、過去18か月間にカブールで起きた20件近い攻撃について犯行声明を出している。学生や大学教員、小売店主などが末端組織である「細胞」に加わっており、アフガニスタンや米国の治安部隊の目を盗み、極めて要塞化されたカブールに大虐殺をもたらそうとしている。

 これは、戦争で疲弊したカブール市民や、再び台頭している旧支配勢力タリバン(Taliban)を撃退することに悪戦苦闘している治安部隊、そして対テロを目的にアフガニスタンに駐留している米軍にとっても懸念すべき事態だ。

 2014年に出現しアフガニスタンとパキスタンで活動しているIS系の「イスラム国ホラサン州(IS-K)」は主に両国や中央アジアを拠点とするイスラム武装勢力や、不満を抱いてタリバンから離脱した元戦闘員で構成されている。

 イスラム教スンニ派(Sunni)のIS-Kは2016年夏にカブールで初の攻撃を行い、犯行声明を出した。以後、首都で拡大し続けるネットワークを生かしながら、治安部隊やイスラム教シーア派(Shiite)に対する攻撃を繰り返し、その頻度は次第に増加している。

 専門家らによれば新たな戦闘員は不足していない。ISはアフガニスタンに数十年にわたり存在している過激思想の流れを探し当てることに成功し、また都会の若者たちの間にインターネットが普及していることを追い風に社会経済的な階級の壁を越えて活動している。

■表向きは普通の学生や労働者

 独立系シンクタンク「国際危機グループ(ICG)」のシニアアナリスト、ボーハン・オスマン(Borhan Osman)氏は、カブールのIS細胞の戦闘員や支援者らは表向きには家族と暮らして毎日授業に出たり仕事に行ったりしていると指摘する。

 そして夜間に集まってジハード(聖戦)について話し合い、自分たちがよく知るカブール市内の標的に対する攻撃を企てる。昨年5月に約150人が死亡したトラック爆弾による大規模な攻撃以降、市内の警備は強化されているが、彼らは標的を熟知しているためこうした変化にも対応できる。

 オスマン氏は「彼ら全員が貧しいとは言えない。カブールの中産階級家庭の出身者が大勢いる。大学や高校を出ている者もいる」と述べ、大半は何らかの宗教教育も受けていると語った。

 アフガニスタン政府および治安部隊にとって最大の脅威は依然としてタリバンだが、カブールは昨年12月だけで3回の攻撃があり計数十人が死亡するなど、ここ数か月はIS-Kがニュースを独占している。

 アフがニスタン当局や欧米筋がAFPに語ったところによると、ISが犯行声明を出したカブールでの攻撃のうち数件に、昨年のトラック爆弾攻撃を起こしたとされるタリバン系の武装勢力ハッカニ・ネットワーク(Haqqani Network)が関与しているという。攻撃の中には、各国大使館や北大西洋条約機構(NATO)の拠点から数メートルという近さで起きたものもあった。

 米軍は昨年、ナンガルハル(Nangarhar)州のIS施設に大規模爆風爆弾(GBU-43/B Massive Ordnance Air Blast)、通称「MOAB(モアブ)」を投下した。この爆弾が実戦で使われたのはこれが初めてで、実戦で使用された史上最大の非核爆弾となった。

 米軍はさらにアフガニスタン軍と連携し集中的な空爆を実施した。しかし専門家らは、この戦略でISを壊滅させることはできなかったと指摘する。それどころか、モアブのような圧倒的な威力を持つ大型爆弾使用が選択肢とならないカブールへの戦闘員の流入を加速させる結果になったのではないかと言われている。

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