http://www.yomiuri.co.jp/national/20180117-OYT1T50017.html

 公立図書館が、本を借りたまま返さない「未返却者」への対応に苦慮している。

 東京都足立区の調査では、料理本や旅行ガイドブックなどを中心に2万冊以上の本が返却されず、計2800万円を超える被害が出た。他の自治体でも同様の行為が横行しており、各図書館では、未返却者宅を個別訪問するなど対応を強化している。

 足立区立中央図書館の調査によると、区内15館で〈1〉返却期日から10年以上経過した〈2〉5年以上貸し出し、督促先がわからない――図書を調査したところ、2万1603冊(約2840万円相当)が該当することがわかった。未返却者は計8222人だった。

 ガイドブックや歴史書、料理本などが多く、15年以上返却されていない本や計約4万円の美術書を借りたままの人も。督促を受けて返却した区民の中では「返し忘れていた」「引っ越した」などの理由を挙げる人が多かった。

 区は未返却者に電話やはがき、メールで督促し、一昨年度からは自宅訪問も始めるなど回収に力を入れている。ただ転居先がわからないケースも多く、蔵書リストにあるのに借りることができないといったサービス低下につながるため、区は昨年6月までに全冊の被害額の返還請求権を放棄した。担当者は「本は区民の貴重な財産。マナーを守って利用して」と呼びかけている。

 本の長期未返却者が多いのは足立区だけではない。

 新宿区立中央図書館によると、区内11館の未返却の書籍は、2012〜15年度に4502冊。各図書館では電話やはがきによる督促をしているほか、価値の高い本を貸し出すなどした人には職員が直接訪問して返却を求めており、16年度は19冊を回収した。担当者は「本は税金で購入しており、期限を守って返却してほしい」と話している。

 三鷹市でも16日現在、5年以上返却されていない本や雑誌は4411冊に上る。同市では、15年9月から返却期限の2日前に、返却期日を知らせるメール配信を希望者に行っている。担当者は「積極的に返却期限を案内することで、未返却の蔵書数減少につなげたい」と話す。

 日本図書館協会(中央区)によると、長期未返却本の定義や対応は各図書館に委ねられているため、被害の把握は難しいという。米国や英国などには返却期日を過ぎた未返却者に対し延滞料を請求する図書館もあるといい、担当者は「各公立図書館は住民のために知的財産を未来に残す役割を担っており、本を返却しないのはその役割を途絶えさせる行為だ。借りた本は返してほしい」と訴えている。

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