体外受精など不妊治療費用の助成制度を巡り、厚生労働省が、来年度から実施を検討していた事実婚カップルへの対象拡大の見送りを決めた。子どもを持ちたい人たちを幅広く支援するために検討を進めてきたが、「父親が確定できない恐れがある」などとの指摘に配慮した。

 事実婚カップルに対する不妊治療の公的助成は一部自治体が独自に実施しているが、国は認めていない。一方、公的年金では事実婚のパートナーにも遺族年金を支給。健康保険でも被扶養者になれるなど法律婚と同様に扱われている。

 他制度とのバランスを考慮し、同省は事実婚カップルへの不妊治療助成でも対象とする検討に入った。昨年4月の通常国会では当時の塩崎恭久厚労相が「多様化している家族の在り方を受け止めなければならない」と答弁。同年7月に厚労省が開いた会合でも産婦人科医や当事者支援団体のメンバーらの拡大を求める意見が相次いだ。これを受け、厚労省は助成金支給の要件見直しに着手した。

 しかし、事実婚で子どもの父親を確定するには男性の認知の手続きが必要。「誰が父親かあいまいになりかねない」との懸念が根強いことを踏まえ、同省は「生まれる子と父親との関係や子どもの権利などさらに検討が必要」と判断した。

 昨年、参院厚労委員会でこの問題を質問した社民党の福島瑞穂参院議員は「事実婚でも不妊治療を受けられているのに、助成の対象外にするのはおかしい」と指摘する。

 不妊治療に関する国の助成制度は2004年に始まった。健康保険が適用されない体外受精と顕微授精について、初回治療で最大30万円、2回目以降は同15万円が支給される。男性の手術にも同15万円の助成がある。15年度は16万368件あった。【藤沢美由紀】

配信2018年1月18日 06時30分
毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20180118/k00/00m/040/138000c