弁護士ドットコム 2018年01月23日 10時26分
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宮城県亘理町で昨年5月、女性の白骨遺体がみつかった。宮城県警が調べたところ、死亡時期が室町時代(14〜16世紀)ということがわかった。今後、国立科学博物館筑波研究施設(茨城県つくば市)で、くわしい調査がおこなわれる予定だ。

亘理町によると、人骨が発見されたのは、亘理町の太陽光発電所内という。重機で地面を掘り返していたところみつかった。身長約150センチの女性で、30〜50歳とみられる。発見場所が、海から約600メートルの地点だったことから、県警亘理署が、東日本大震災の犠牲者の可能性もあるとみて捜査していたが、放射性炭素年代測定法で年代がわかった。

この人骨は現在、亘理町で保管されているが、今後、国立科学博物館筑波研究施設でくわしい調査がおこなわれる。亘理町の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「これほど古い人骨が見つかったのは、とてもめずらしい」とコメントした。

●身元不明の遺骨の取り扱いは「法律」で決まっている

今回のような遺骨の場合、法律上どのように取り扱うことになっているのだろうか。刑事事件にくわしい松岡義久弁護士によると、遺体の取扱いについては、「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」に規定があり、今回の遺骨についても、基本的に、この法律に基づいて取り扱うことになるという。

「警察官は、死因を明らかにするため、発見場所を調べたり、関係者に対する質問など調査をおこないます。必要があれば、医師や歯科医師に立ち会いや、死体の歯牙の調査を求めることができます。検査・解剖もおこないます。

その結果、身元が明らかになった場合、遺族などに死体を引き渡します。ただし、引き渡しができないときは死亡地の市町村長に、身元不明の場合にはその所在地の市町村長に引き渡すことになります。今回、室町時代の遺骨で身元不明ですから、所在地の市町村長に引き渡すことになります」(松岡弁護士)

宮城県警は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「遺骨は亘理町に引き渡した」と説明した。つまり、今回の遺骨は「身元不明」として扱われたというわけだ。

●「送致」されないケースもある

また、刑事訴訟法では、司法警察員は、犯罪捜査をしたとき、事件を検察官に「送致」(いわゆる「送検」)しなければならないということが定められている(同246条)。今回のケースでもそうなるのだろうか。松岡弁護士は次のように解説する。

「犯罪捜査の場合、微罪処分といって『犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたもの』以外は、送致する必要があります。

今回のようなケースは、そもそも犯罪の捜査として処理しない可能性があります。その場合、送致されません。ただし、その場合でも、警察において、白骨死体の発見やその死因について、検察官に報告されます。

もちろん仮に、犯罪捜査として取り扱った場合、捜査の経緯を記載した事件記録や証拠物とともに事件を送致することになるでしょう」

亘理署の担当者によると、今回の遺体は検視された。検視規則では、検視後は検察官に結果の報告と調書送付をしなければならないと定められている(同5条)。ただ、室町時代のものだったことから、「事件性は問えない」という意見を添えて、規則に基づいて書類送付することになったという(同担当者)。

●調査終了後の「引き取り手」は決まっていない

なお、氏名・住所がわからず、引き取り手がない死者は「行旅死亡人」といわれる。行旅病人及行旅死亡人取扱法にしたがって、官報に掲載される。遺跡などから発掘された人骨についても、そのような扱いになっているが、亘理町によると、年代が古いことから「官報等に掲載しない」と判断した。

また、国立科学博物館筑波研究施設で、いつから・どのような調査がおこなうか、まだ詳細は決まっておらず、調査終了後の人骨についても、亘理町が引き取るのか、同研究所が引き取るのか定まっていないという。