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 2018年春闘が事実上スタートした。昨年10月、安倍晋三首相は機先を制するかのように経済界に対し「3%」の賃上げを要請。政府が賃上げを促す「官製春闘」は5年目だが、初めて具体的水準に言及した。ただ、経団連が一時金などを含めた「年収ベース」の改善も容認しているのに対し、連合側は基本給を一律に底上げするベースアップ(ベア)を重視。首相の異例の水準明示を受けても、労使の温度差は依然大きい。

一時金6.6カ月要求へ=業績回復受け0.3カ月増−トヨタ労組

 ▽政権主導に危機感
 「連合は4%と言っており、3%が上限と考えられたら困る」。連合の神津里季生会長は22日、東京都内で開いた「経団連労使フォーラム」でこう強調。首相による事実上の数値目標設定によって、政権ペースで春闘の相場が形成されることへの危機感をあらわにした。

 昨年10月、衆院選に勝利した安倍首相は、直後の経済財政諮問会議で3%の賃上げを要請。22日の衆院本会議での施政方針演説でも「3%以上の賃上げを行い、積極的に投資を行う企業には法人税負担を25%まで引き下げ、世界で十分に戦える環境を整える」とハッパを掛けた。

 日本経済は景気回復が続く一方、賃金や物価は上昇の動きが鈍く、消費は力強さを欠く。首相の要請には今秋の自民党総裁選をにらみ、デフレ脱却へ自ら主導して賃上げを実現し、経済の好循環をアピールしたい狙いも透けて見える。経団連はこれに呼応し、春闘指針に「3%」を明記した。

 だが、首相は3%を実現する手法には言及していない。経団連の榊原定征会長も22日の記者会見で「3%の水準は年収か月収かは詰めていない」と指摘。月例賃金に限定せず一時金や各種手当を含め、各企業の事情に即した待遇改善が現実的との考えを表明した。

 ▽働き方改革も左右
 これに対し、連合が目指すのは2%程度を基準としたベアと定期昇給を合わせて、4%程度の月例賃金の引き上げだ。企業業績の変化で増減しやすいボーナスと異なり、将来にわたり安定的な収入増加が期待できるベアの実現が、所得改善を伴った経済の自律的成長に不可欠と主張。3年連続で同じ水準の要求を掲げ、中小企業については大手との格差是正へ一段の底上げが必要と訴える。

 好調な企業業績や人手不足が続く中、賃上げに向けた環境は悪くない。しかし、月例賃金でみれば、引き上げ率が3%を超えたのは1994年の3.10%が最後。経営側には「業績が上がった分はボーナスで還元する」(電機大手幹部)と、固定費増加につながるベアへの慎重姿勢が目立つ。

 働き方改革の成果が労働者の待遇改善にどう反映されるかも焦点となる。長時間労働の抑制で労使は歩調をそろえるが、連合の神津会長は「残業減で総収入が減るのでは、経済の好循環にブレーキになる」とくぎを刺す。

 生産性向上による収益の増加をベアや賞与、手当で還元する動きが広がるかどうかは、働き方改革の持続性も左右することになりそうだ。

◇春闘の主な日程
1月22日 経団連労使フォーラム(23日まで)
1月23日 経団連と連合のトップ会談
2月中旬  大手企業労組が要求提出
3月14日 大手の集中回答日
3月下旬  中堅・中小の集中回答