https://www.businessinsider.jp/post-161041

取引所コインチェック(Coincheck)から580億円相当の仮想通貨が不正に引き出された問題は1月28日、
同社が仮想通貨NEMの保有者に対して、日本円で返金すると発表したことから、投資家の間にはいったん
安堵の声が広がった。         

そもそもコインチェックに投資していた人たちは、どんな思いでお金を入れていたのか。
Business Insider Japanは、コインチェックからの流出が明らかになった1月26日夜に、同社前に来ていた2人に話を聞いた。

■ねっとり、ヌメッとした暴落だった

「(返金の報道を受けて)だいぶ安心しました。全体的に前向きな感じで(ネットなどでも)取られていて、いい方向だと思います」

コインチェック倒産という最悪の事態は免れそうだと、個人投資家のAさん(30)はホッと一息ついている。

1月26日17時ごろだった。練馬区内のスシローで、Aさんは弟と一緒に一貫280円の本マグロを食べていた。
いつものようにコインチェックで仮想通貨の値動きをチェックすると、NEMが暴落していた。仮想通貨の値動きの乱高下は
よくあることだが、このときの感覚は違った。

「肌感覚なんですけど、ねっとり、ヌメッとした暴落だった。おい、気持ち悪いぞと(弟に言った)」

ヤフーのリアルタイム検索でランキング上位になっていたキーワードで、流出騒ぎを知った。さらにネットに出回る
NEMの取引画面の画像を見て一気に不安は増した。

「NEMが不正に送金されているのでは?」

一緒に食事をしていた弟の車で渋谷にあるコインチェックのオフィスが入るビルまでやって来た。
記者が会った時は、追い詰められた表情でこう話していた。

「シャレになりません。暴れたいくらいの気持ちですが、暴れたらただのアホですからね。でも本当にキツいです」

コインチェックの和田晃一良社長らの記者会見はオフィス近くに止めた車の中で見た。いたたまれなくなり、
会見が開かれた日本橋の東京証券取引所まで車を走らせた。

■正社員になってもたかが知れてる

Aさんは愛媛から上京して都内の私立大学を卒業。卒業後は2年ほど貯金を切り崩して生活した後、
2012年から契約社員として郵便配達の仕事を始めた。就活しても正社員になるのは厳しいし、東京は時給が高いので
契約社員でもやっていける。フルタイムで年収は約450万円、月々の手取りは30万円ほどだ。5年間で約250万円を貯めた。

「例えばコンビニで値段を見ずに1.5リットルのペットボトルを買うとか、ハーゲンダッツを買うとか。すごい贅沢をしたいわけじゃないけど、
ゆとりが欲しかった。そういう意味でお金が欲しかったんです。でも正社員になっても年収は600万円くらいでたかが知れている」

株は市場がすでに出来上がっていて自分が勝てる可能性が低いし、ギャンブルは性に合わない。海外から輸入した服や
フィギュアなどをヤフオクやメルカリで転売もしてみて、月10万円ほどは稼げたが「結構しんどい」。そんな自分でも一発逆転できる
千載一遇のチャンスを探していた2016年、見つけたのが仮想通貨だった。

「半年くらいどれがいいかなっていうのをじっくり調べて。結局リップルに決めました」

2017年3月、貯金250万円のうち生活費50万円を残して200万円を一気にリップルに投資した。
取引所にコインチェックを選んだのは、当時、大手でリップルを扱っている取引所が他に見当たらなかったからだという。

買った時点で「これは将来行くな」とピンと来た。読みが当たり、投資した200万円は次の日には1000万円になった。
そのあとは税金の問題もあり(注:日本円に換金した時点で雑所得に区分され所得税がかかる)、「ガチホ(ガチでホールド)」の姿勢を貫いた。
1月26日時点で総資産は1億5000万円相当にもなっていた。