仮想通貨の普及に伴い、通貨を独占してきた各国の中央銀行も対応を迫られており、
スウェーデンや中国は中銀デジタル通貨発行を検討し始めている。

黒田東彦総裁は昨年10月の講演で、中銀として現時点でデジタル通貨を発行する具体的な計画はないものの、
「将来的に新しい技術を自らのインフラ改善に役立てていく余地がないのか、不断の研究を重ねていくことが求められる」と述べた。

  仮想通貨を巡っては、決済に使う通貨としての危険性も明らかになっている。
日本の仮想通貨取引所大手のコインチェックは26日、取引している仮想通貨「NEM(ネム)」約580億円分(5億2300万ネム)が
外部からの不正アクセスで消失したと発表した。
同社は顧客の保有分約463億円を自己資金から日本円で返済するとしているが、補償時期は未定だ。

インタビューは問題発表前に行われたが、河合氏はビットコインなど仮想通貨で使われるブロックチェーンについては「未発達の技術」だと述べていた。
現在の仮想通貨は異常な高騰や下落を繰り返しており、「決済手段としては使えない」との見方を示した。

  河合氏は29日、コインチェックの不正流出問題に関する追加取材に対し、コメントを控えた。

河合氏は「そもそもキャッシュレスが進まない国でデジタル通貨が本当に必要なのか」と疑問を投げかける。

韓国のカード決済金額の対名目GDP(国内総生産)比率は4割を超すが、日本は1割。
「なぜ中銀デジタル通貨を発行しなければならないのか思いつかない」とし、「私の中では不要だと思っている」と述べた。

河合氏はフィンテックセンター長に就任した1年前、自らの生活を現金を使わずにキャッシュレス化した。
生活の大半はキャッシュレス化が完了したが、夜の会食だけは進んでいない。
割り勘をキャッシュレスで行うスマホのアプリがいくつか出ているが、
「相手は現金で不便を感じてないのでアプリを入れてくれない」という。

現金志向が強い背景について、河合氏は「低金利はあまり関係ない。消費者の選択であり、仲介する金融機関の選択としか言いようがない」と指摘する。
ただ、インバウンド(訪日外国人客)が増加する中、キャッシュレス化が進まなければ「外国人の消費は落ちる。それが大きなリスクだ」としている。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-01-28/P35GIW6TTDS001