http://www.sankei.com/smp/economy/news/180131/ecn1801310005-s1.html

 政府がサイバー攻撃対策の強化に向けて、関連するソフトウエア解析を合法化する方針を固めたことが30日、分かった。これまで攻撃に備えたソフトウエア開発のための既存ソフトウエアの解析は著作権法上、違法か合法かの線引きが曖昧だったが、政府は同法で合法なことを明示して企業や研究機関での研究を促進し人材育成にもつなげる考えだ。開会中の通常国会に、著作権法の改正案を提出する。

 ウィンドウズなど既存のソフトウエアに対するサイバー攻撃に対処するためには、著作権のあるソフトウエアの解析や複製などを行って脆弱(ぜいじゃく)性を発見した上で、セキュリティー対策のソフトウエアを開発する必要がある。

 しかし、現行の著作権法では、複製や解析は「比較、分類その他の統計的な解析を行う」場合に用途が限定されていた。

 著作権法の改正案では、用途を具体的に限定せず、セキュリティー対策など広範な目的で解析や複製ができるように条文を見直す。「ソフトウエアの解析や複製の必要な範囲は広がっており、権利者のビジネスに影響がない範囲であれば解析や複製ができるように柔軟な表現の条文を盛り込む」(政府関係者)方向だ。具体的な表現は今後詰める。

 セキュリティー対策のためのソフトウエアの解析は、欧米では認められているが、日本では明示的に認められていないため、「日本の研究者やセキュリティー人材育成の遅れの一因になっている」(総務省幹部)との指摘も出ている。経済産業省の推計によれば、平成32年にはセキュリティー人材は約19万3千人不足するとされており、人材育成は急務となっている。

 経団連も昨年12月にまとめたセキュリティー対策に関する政府への提言で、「研究開発や演習など民間の自主的対策を促すよう、法律の必要十分な見直しをスピード感を持って進めるべきだ」と明記するなど、法改正への要望を強めていた。