スマートフォンを開けば、すぐに仮想通貨の相場ウィジェット。「仕事中に見ると集中できず、寝る前に見て、起きても見る。値付けが下がれば気落ち、上がれば高揚する。これの繰り返し」(tetuさん)
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「超絶望した。夢を見させてもらいました」──コインチェック(東京都渋谷区)が運営する仮想通貨取引所「coincheck」から1月26日、約580億円相当の仮想通貨「NEM」(単位はXEM/ゼム)が不正アクセスによって盗まれた問題で、同社は日本円の出金と、取り扱う全ての仮想通貨の入出金を停止した。業界全体に大きな動揺が広がる中、コインチェックを利用していた都内在住の26歳男性が心境を語った。

●情報を見て「あぜんとした」

 26日午後1時44分、コインチェックから「【重要】NEMの入金について」というタイトルのメールがユーザーに届いた。利用者のtetuさん(仮名)は、「何事かと思いましたが、自分が投資している仮想通貨『XRP』(単位はXRP/リップル)には関係なさそうなので、すぐに仕事に戻りました」と話す。

 その後、コインチェックから続報を知らせるメールは無く、「一時的な取引トラブルだろう」と思い込んだ。

 午後5時半、tetuさんが会社を出てTwitterをチェックしていると、coincheckが危険な状態であることに気付いた。「既に(日本円、アルトコインの)出金が停止されている状態で、あぜんとしました」(tetuさん)

 (アルトコイン:ビットコイン以外の仮想通貨)

●仮想通貨取引、きっかけは「軽い気持ち」

 tetuさんは都内在住のITエンジニア。決して高給取りではないが独身ということもあり、不自由なく暮らせる経済力を持っている。仮想通貨の取引を始めたきっかけは「軽い気持ち」だったという。

 「もともと投資やFXに興味がありました。仮想通貨は友人が始めたのがきっかけ。取引所への登録など始めるのは簡単で、軽い気持ちでした」(tetuさん)

 tetuさんは、最初に大手仮想通貨取引所「bitflyer」(ビットフライヤー)でビットコインのレバレッジ取引(FX)をスタート。FXは自己資金よりも多くの金額を取引できるが、元手以上の損失が出る場合もある。tetuさんはここで20万円の損失を出してしまったという。

 「FXは値動きが激しく、利ざやが大きいと思った。失敗したのは完全に自分の力量が無かったからで、やってみると本当に難しかった。その後、リップルに投資したのは正直賭けでした」(tetuさん)

 FXで失敗した後、tetuさんはリップルに投資してリベンジをすることを決め、取り扱いのあるcoincheckの利用を始めた。

 仮想通貨のリップルを発行する米Ripple社は、ブロックチェーン技術を使った送金技術の実証実験を国内外の金融機関と進めている。2016年には、SBIホールディングスと次世代決済基盤を提供するSBI Ripple Asia社を立ち上げた。

 ただし、これらは仮想通貨のリップル自体が直接的に金融機関で取り扱われるわけではない。そもそも仮想通貨が銀行にひも付くことに是非を問う議論もある。少なくともtetuさんは、金融機関との取り組みを進めている米Rippleが発行する仮想通貨という将来性を見込んでリップルに投資した。

 「すぐに倍になるだろうと期待を込めて10万円を投資しました。値上がりは思った以上に早く、翌日には10万円を追加投資しています」(tetuさん)

 投資時点では1XRP=約60円だったが、最高で約400円まで上昇。投資した20万円分のリップルは、最高で150万円分の価値まで膨れ上がった。tetuさんは半分の10万円分を30万円で利益確定し、残りの10万円分はそのままリップルでcoincheckに預け続けたという。

 利益確定した30万円は、中国の仮想通貨取引所「BINANCE」(バイナンス)を通してTriggers(単位はTRIG/トリガー)やAION(単位はAION/エイオン)に分散し、さらに投資を続けた。

 そんな状況の中で今回の騒動が起きた。tetuさんはcoincheckで取引が一切行えない“強制ホールド”状態に陥っている。1月29日時点のレートではリップルを日本円に変えても利益が出る状態というが、今後の動きによっては「他に投資しているアルトコインも含めて、悲惨なことになることも覚悟しています」(tetuさん)と話す。

>>2以降に続く

2018年01月31日 08時00分
ITmedia
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