【ワシントン会川晴之】一般教書演説でトランプ米大統領は、外交・安全保障分野では北朝鮮問題に多くの時間を割き、政権の最重要課題と位置付けていることを改めて示した。

 「北朝鮮の非道な独裁政治ほど、国民を残忍に抑圧してきた体制はない」。トランプ氏は人権問題を皮切りに、「向こう見ずに核・ミサイルを追求し、すぐにも米本土の脅威になり得る」と北朝鮮批判を展開。北朝鮮で拘束され、昨年6月に意識不明の状態で解放された後に死亡した米国人大学生のオットー・ワームビア氏の両親や、韓国在住の脱北者の男性を演説会場に招いて紹介するなど、細かな趣向も凝らした。

 トランプ氏は、過去20年間の歴代米政権が北朝鮮に譲歩を続けてきた結果、今日の事態を招いたとの認識を重ねて示してきた。この日も「過去の政権の過ちを繰り返さない」と主張した。

 反米を掲げるイランへの対抗心も示した。昨年末から今年1月にかけてイラン国内で反政府デモが相次いだことに、「腐敗した独裁政権の犯罪に対して立ち上がった。米国は自由を求めて勇敢に闘うイランの人々を支持する」として熱烈な支持を表明。米議会に対しては、米国など主要6カ国が2015年にイランと結んだ核合意の「根本的な欠陥」を見直すよう求めた。

 トランプ氏は北朝鮮やイランなどの「ならず者の政権」やテロ集団、「米国の利益、経済、価値観に挑戦する競合国」とする中国やロシアの存在を踏まえ、「力による平和」の実現を改めて訴えた。「力」の象徴である核抑止力については「核戦力の近代化と再建が必要だ」と強調。2日に発表する新たな核戦略「核態勢の見直し(NPR)」で、大陸間弾道ミサイル(ICBM)など戦略核兵器の更新などに力を注ぐ考えを打ち出す方針だ。

 オバマ前政権は「核兵器のない世界」の実現を掲げたが、トランプ氏は「いつの日か世界中の国が核廃絶のため一丸となる魔法のような瞬間が訪れるだろう」と述べつつ、「不幸なことに今はその時でない」として理想主義を排する考えを示した。

 また、エルサレムをイスラエルの首都と認定したことに関し、国連総会で多くの国が米国を非難したことに強い不快感を表明。今後は米国の利益に沿う友好国に対してのみ、年間200億ドル(約2兆2000億円)の米国の援助が渡るよう、議会が新たな法律を整備することを求めるなど、独善ぶりも目立った。

1/31(水) 22:01
毎日新聞
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