柔道整復師(柔整師)による保険金の不正受給が山形県内で相次いでいる。

 1日には、鶴岡市で接骨院を営んでいる男ら2人が詐欺容疑で県警に逮捕された。柔整師の逮捕は今年に入って2人目。昨年6月には山形市の柔整師が有罪判決を受けている。業界団体の県柔道整復師会(山形市)は、不正防止の通知を全会員に出すなどしているが、相次ぐ不正発覚に、「有効な対策が見つからない……」(幹部)と頭を抱えている。

 1日に逮捕されたのは、鶴岡市の柔整師の男(60)と、同市のアルバイト店員の女(28)の両容疑者。県警の発表によると、2人は、交通事故でけがをした女の施術名目で昨年2〜7月、通院日数を127日分水増しして保険会社に保険金を請求し、計約176万円をだまし取った疑い。2人は「127日間全て通った」などと容疑を否認しているという。

 捜査関係者は、女は首にけがをしたが、全治7日だったとみている。

 ◆不正防止へ文書配布 

 柔整師を巡っては、山形市で接骨院を営んでいた男が保険金約1053万円をだまし取ったとして、昨年6月に懲役3年、執行猶予5年の判決を受けた。今年1月には休業保険金名目で133万円をだまし取ったとして、天童市の男が逮捕・起訴されている。

 不正受給が相次いでいることを受け、山形県柔道整復師会は2016年11月と今年1月、全会員に保険金請求の不正防止などを呼び掛ける文書を配布。今月11日には山形市で全会員を対象に、緊急全体会議を開催する予定だ。

 ◆基準ない治療費

 山形市と今回の鶴岡市の事件では、交通事故に適用される自賠責保険制度を利用し、保険金を不正請求したとみられている。自賠責保険は健康保険のように治療費の基準がなく、柔整師の裁量で料金を決めることができるうえ、同会の斉藤勝典会長(68)は「会などが書類を審査する健康保険と違い、不正のチェックが難しい」と話す。

 また、県警幹部は「地方の整骨院では客の取り合いとなっている」と、不正受給が相次いでいる背景を分析する。規制緩和で、柔整師の数は16年に全国で6万8120人となり、10年前の約1・8倍に増えた。一方、交通事故の負傷者数は年々減少傾向にある。

 厚生労働省は健康保険の不正防止に向け、療養費の請求を行う施設管理者の柔整師の要件を厳しくするなどの対応を決めた。自賠責保険に関しては「警察との連携強化や、情報提供のホットライン設置などの対応が取られている」(損害保険料率算出機構)という。

 県柔道整復師会は「一部の柔整師の不正によって業界全体の評判が落ちることは遺憾。業界挙げて再発防止にさらに力を入れたい」としている。

2018年02月04日 09時40分

http://www.yomiuri.co.jp/national/20180204-OYT1T50017.html?from=ytop_main5