柄のデザインを施した中古のたばこ自販機があり、「折紙(おりがみ)」の文字が躍る。友人と一緒に観光に来た会社員の猪瀬奏恵(かなえ)さん(21)=さいたま市=は、たばこ箱大のパッケージから折り鶴を取り出し「日光のイメージにぴったり」と声を上げた。

 自販機は宇都宮市のIT関連企業「アクシス」が昨年十月に設置した。「日光に折り紙の自販機を置くと面白そう」「障害者の就労支援に」。社員との雑談から生まれたアイデアを社長の和気悟志(わきさとし)さん(41)が採用。「つるのはねプロジェクト」と銘打ち、日光市の就労支援事業所「すかい」の協力を得て実現した。

 手掛けるのは知的障害のある女性三人だ。鶴やかぶと、まりなどの五作品一組で二百円。種類は一応決まっているが「楽しんで取り組むのが大事。その時々で作品が変わることも」。中身は箱を開けてのお楽しみだ。

 設置当初、五十組超を販売したところ、二日ほどで完売した。三カ月で約七百組が売れ、制作が追いつかないこともある。これまで仕事が困難だったという三人。事業所長の郷間(ごうま)優子さん(34)は「みんな生き生きと作業している」と手応えを感じている。

 箱に入っているQRコードがフェイスブックにつながっており、写真で作り手の様子などを紹介している。郷間さんは「買った人が障害者を身近に感じるきっかけになれば」と期待する。

 今後はフェイスブックから観光情報も発信する予定だ。和気さんは「日光の新しい観光資源として定着させ、就労支援として他の事業所にも広げたい」と話している。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/list/201802/CK2018021302000144.html
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