視覚障害者の目となる盲導犬の育成団体が発足してから半世紀、高齢や複数の障害がある利用者にも対応できる犬を選べるようになり、活躍の場は広がっている。生活に欠かせない存在になる一方で、同伴での入店拒否は後を絶たず、社会の誤解や偏見は大きな課題だ。

 「僕は目が見えず、耳が聞こえないが、盲導犬がいるから外出ができる。この子なしの生活はもう考えられない」

 大阪市の門川紳一郎さん(52)は自宅を出ると、バスと地下鉄を乗り継いで約1時間かけ、勤務先の事務所に向かう。左側には盲導犬のベイスがまっすぐ歩けるよう寄り添い、人や車がいれば避け、信号やバス停の前で止まって知らせる。

 門川さんは生まれたときから目が見えにくく、4歳で聴力を失った。つえで外出を続けたが、視力が落ちて不安を感じるようになり、盲導犬を利用したいと関係者に相談。歩行で体が左右に揺れやすい門川さんを支えるため、大きめのベイスが選ばれ、平成28年からパートナーになった。

 外には車の行き交う通りや交差点、人の流れが絶えない改札口がある。エンジン音や話し声は聞こえず、わずかな風や空気の流れなどが頼りだ。そんな時、曲がり角や段差を知らせてくれるベイスはとても頼りになる。

盲導犬は、昭和42年発足の日本盲導犬協会など11団体が、目の見えない人や視力の弱い人向けに育成している。障害者を支える補助犬には聴導犬や介助犬もいるが、頭数は最も多く、平成28年度で951頭。頭数が増え、利用者のニーズにも対応できるようになった。

 盲導犬協会のベテラン訓練士で、ベイスを育成した田中真司さんは「門川さんのように条件が合えば、ふさわしい犬を提供できる」と話す。

 利用者の中には40年以上にわたり盲導犬と暮らし、高齢になった人もいる。その場合は、お年寄りのペースに合わせてゆっくり歩く、落ち着いた性格の犬を選ぶなど工夫をしている。

 盲導犬協会によると、盲導犬を必要とする人は3千人。だが、周知不足や、費用が高いとの誤解が背景にあり、諸外国と比べると利用は低調だ。

盲導犬の現役期間は一般的に2歳から10歳ごろまでで、繁殖した子犬のうち、盲導犬になるのは3〜4割。利用者とのマッチングは1年ほどかかり、繁殖や訓練技術の向上が必要になる。

 誤解や偏見をどう取り除くかも大きな課題だ。国は、飲食店やホテルなどでの同伴受け入れを義務付けている。だが盲導犬協会の29年の調査では、入店やタクシー乗車を断られた人は55%に上った。他の客への気兼ねや、利用者が衛生面に配慮していることへの無理解があるとみられる。

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