滋賀県甲賀(こうか)市で昨年の衆院選滋賀4区の開票作業の際、市選挙管理委員会事務局幹部を兼ねる当時の市幹部3人(総務部長、総務部次長、総務課長)が無効票を水増ししていた問題で、市は13日、管理職を対象に研修会を開き、法令順守の徹底を求めた。岩永裕貴市長は「市全体に意識の低さがあった」としており、ずさんな管理態勢が明らかになりつつある。

 開票作業は昨年10月22日午後9時半、市内の情報交流センターで始まった。市議選の投開票も重なり、投票箱は前回衆院選(平成26年)より100個多い400個。煩雑な作業が予想される一方、台風21号接近への対応のため、一部職員は従事できなかった。

 投票箱の扱いも今回は従来と異なった。従来は各投票所から運ばれた投票箱は開票作業を行うホールに全て収めていたが、今回は入りきらないため、全てがホール前の楽屋などに並べられた。開票は、投票箱を楽屋からホールに運んで投票用紙を取り出し、箱が空になったことを立会人が確認後、箱をホール外のレッスン室に運ぶ−という流れ。職員用のマニュアルには複雑な動線が記されていた。

 だが開票が進む中、開票数が投票数よりも数百票下回っていることが判明。「開票されていない投票箱があるのでは」と職員が捜索したが、見つからない。そこで総務部長らがとった手段は、未使用の投票用紙を混ぜて無効票を増やし、つじつまを合わせるという「不正行為」だった。

なぜ、あるまじき不正行為を働いたのか。総務部長ら3人は市選管委員長の聞き取りに対し、「大量の票が不明となり、捜索を指示したが確認できず、気が動転して焦った」と説明したという。

 未開票の投票箱は投開票翌日の23日朝、後片付けしていた職員がレッスン室で発見、中にあった投票用紙を総務部長らに渡した。総務部長ら3人は相談の結果、総務課長が投票用紙を自宅に持ち帰り、焼却処分したという。

 そして約1カ月後の昨年11月30日、市選管は手続きにのっとり、未使用の投票用紙を廃棄。県選管が求めていた廃棄枚数の報告も、改めて数えずに投票用紙配布数と投票数の差を机上で計算して出していた。ちゃんと数えていれば、廃棄枚数の不足がこの時点で分かったはずだった。

 だが関係者によると、未開票の投票用紙があったことは、3人以外の複数の職員も気付いていた。にもかかわらず、今月初めに岩永市長に通報があるまで放置されていたという。

滋賀県警は公職選挙法違反の疑いがあるとみて、3人をはじめ開票作業に携わった職員から任意で事情を聴いている。関係者によると、聴取対象は開票作業を担当した全員を含む40人以上にのぼる見込みという。

 一連の問題を受け市は9日、総務部長ら3人を更迭。弁護士らでつくる第三者委員会を立ち上げ、不正の背景の検証や開票作業のマニュアル見直しなど、再発防止策を検討する方針だ。


ソース
http://www.sankei.com/west/news/180213/wst1802130088-n2.html