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2月16日 14時43分
埼玉県草加市の市立病院が保険適用に必要な国の安全基準を満たしていないのに高度な医療技術が必要な子宮体がんや子宮けいがんの腹くう鏡手術を69人の患者に行っていたことがNHKの取材でわかりました。

この中には学会のガイドラインが腹くう鏡手術の対象としていない進行がんの患者も含まれていましたが、市は去年、問題を把握しながら患者に説明していませんでした。
子宮体がんや子宮けいがんの腹くう鏡手術を行っていたのは埼玉県草加市の「草加市立病院」です。

腹くう鏡手術は患者の体への負担が比較的少ない一方で、高度な医療技術が必要なことから、厚生労働省は保険を適用して行うには常勤の実績のある医師や病理医がいるなどの安全基準を満たさなければならないと定めています。

しかし、草加市立病院はこの基準を満たしていないにもかかわらず、非常勤の医師が去年までの5年間に子宮体がんで58人、子宮けいがんで11人の合わせて69人の患者に手術を行い、診療報酬を請求していたことが病院関係者への取材でわかりました。

手術によって症状を悪化させるおそれがあるとして学会のガイドラインなどで腹くう鏡手術ができる対象としていない進行がんの患者も含まれていました。

市や病院は去年9月、別の医師からの指摘を受けてこうした問題を把握していましたが、手術を受けた患者に説明せず、一般にも公表していませんでした。

草加市立病院は、NHKの取材に対して「不法な医療行為をしたわけではなく保険請求をするうえでの悪意のないミスで厚生局にも届け出た。患者には今後説明する予定だ」としています。

手術繰り返した医師「見よう見まねで」

草加市立病院で腹くう鏡手術を行っていた男性医師は、NHKの取材に対して、「腹くう鏡の手術は特に専門の医師からトレーニングを受けたわけではなく、見よう見まねでやっていた。良性の腫瘍の手術は行っていたので、4年ほど前に子宮がんでも試してみたところ、うまくできたので、続けていた。私が行った手術は治療成績もよかった」と話しています。

また、手術の前にほかの医師や看護師らと患者の病状や手術の手順などを検討したり確認したりする「カンファレンス」という打ち合わせを行っていなかったことについて、「手術をしているのは僕なので、カンファレンスはしない。一緒に手術室に入る2人の医師には『よろしくね』って言っておくだけ。ふわふわした環境だ」と話しています。

問題発覚の経緯とその後の対応

今回の問題が発覚したのは去年9月でした。

産婦人科の非常勤の男性医師がこの病院では保険適用ができないはずの腹くう鏡を使った手術を行い、診療報酬を請求していると別の医師が病院幹部に指摘しました。

病院はその後、男性医師の聞き取りを行い、平成24年度からの5年間で少なくとも58例の子宮体がんと11例の子宮けいがんの腹くう鏡手術が行われていたことがわかりました。

さらに提携している東京医科歯科大学の教授2人を招いて検討委員会を開き、本来、請求できない診療報酬を受け取っていたとして去年10月末、関東信越厚生局に申告しました。

また、同じ頃に草加市議会の一部の議員に説明し、田中和明市長も問題を把握しました。

しかし、手術を受けた患者や市民への説明が一切ないままことしになって悪性のがんの手術を行わない方針だけを病院のホームページで告知していました。

そして15日、NHKが病院に取材をしたところ、草加市や病院は16日になって緊急の記者会見を開きました
(リンク先に続きあり)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180216/K10011331671_1802161442_1802161444_01_02.jpg