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2月16日 18時35分
埼玉県草加市の市立病院が保険適用に必要な国の安全基準を満たしていないのに、高度な医療技術が必要な子宮がんの腹くう鏡手術を69人の患者に行っていた問題で、草加市と病院が16日午後、緊急の会見を開きました。

病院は、本来は受け取れない診療報酬およそ1億円を返還することを明らかにした上で、「過失であって故意ではない。事務的なミスだ」と釈明しています。

会見を行ったのは、草加市の田中和明市長と病院の高元俊彦病院事業管理者です。

この中で高元管理者は、保険適用の基準を満たしていないのに腹くう鏡手術を行い診療報酬を請求していたことについて、本来、受け取れないはずの診療報酬がおよそ1億円にのぼることを明らかにし返還する意向を示しました。

また、学会のガイドラインで対象にならない進行が進んだ患者にも手術していたことについては「医療行為としてできない手術ではなく不法手術ではない。術後の診断で進行が進んでいることがわかるケースもある」と医療上の問題は生じていないと強調し、患者に説明していないことを正当化しました。

そして「術後の手術関連死などは今のところ報告されておらず、術後の環境は比較的良好だと考えている」と説明しましたが、手術を受けた患者のがんの再発率など詳しい術後の状況について問われると「今はお答えできる材料がない。患者の現在置かれている状況を把握したい」と述べました。

草加市立病院とは

草加市立病院は人口27万人余りの草加市で唯一の公立病院で、24の診療科があり、災害拠点病院にも指定されています。産婦人科は平成17年に産科医が不足したことから一時、休止し、市民生活に大きな影響が出ました。

平成19年になって4人の医師をようやく確保し、診療再開にこぎつけました。今回、問題となった腹くう鏡手術を行っていたのはこのとき非常勤で採用された男性医師です。

この男性医師によりますとそれまでは静岡県内の複数の病院で勤務していたということで、腹くう鏡を使った手術はそこで良性腫瘍の手術で始めたと説明しています。

病院関係者「ガイドライン無視した治療」

草加市立病院の複数の関係者がNHKの取材に応じ、腹くう鏡手術を行っていた男性医師について、手術の前に他の医師や看護師らスタッフとカンファレンスと呼ばれる打ち合わせを行わないことがたびたびあったと証言しています。

このため、手術を始めた後に患者の病状が進んでいることをほかのスタッフが認識したケースもあったということです。こうした患者は、学会のガイドラインでは手術の対象外となる人たちですが、そのまま腹くう鏡手術を続行することもあったということです。

病院関係者の一人はNHKの取材に対し、「死亡事故は起きていないがガイドラインを無視した治療が続けられてきたので患者の再発率に問題がないか検証すべきだ」と指摘しています。

手術受けた女性「なぜ止めなかったのか」

去年1月に草加市立病院で腹くう鏡手術を受けた70代の女性がNHKの取材に応じました。
女性によりますとおととし12月に脇腹が痛くなり、不正出血もあったため草加市立病院の産婦人科を訪れたということです。

女性は画像検査などを受けたあと医師から「卵巣に6センチ近くの腫瘍があり、良性か悪性かわからないので腹くう鏡手術を行って良性か悪性か判断する」と説明されたということです。
そして手術後、女性は医師から「悪性だったので卵巣のほか転移の恐れがあるので子宮も全て摘出した」と説明されたといいます。

しかし、女性が退院の際に病院から渡された診療明細書には、保険適用の対象となる卵巣や子宮の良性の腫瘍を摘出するための腹くう鏡手術だったと医師の説明と異なる記載がされていました。

女性は「医師からは治療の選択肢として腹くう鏡手術だけを提示された。最近の医療の主流なのかと思い予備知識もないので、受け入れてしまった。この病院では本来出来ない手術だと聞き、とても驚いています。なぜほかのスタッフや病院長らが手術を止めなかったのか不思議です」と話しています。

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