「フェイクニュース」扱いされていた日本人拉致事件

さて、三浦瑠麗という新進の政治学者が、テレビのバラエティ番組で、日本国内にいるという「スリーパーセル」(浸透工作員)についての発言をしたことが問題となっている。

三浦の発言は韓国なら全く問題にはなっていなかっただろう。当たり前の話だからだ。

実際に北朝鮮はこれまで工作員によるテロを繰り返しており、それは枚挙に暇ない。そして、その協力者としていつもあげられるのは、現地の一般社会に入った「スリーパーセル」の存在である。

(※この言葉は妙に現実離れした印象を与えるので以降は使わない。なお「セル」とは「細胞」の意味で、共産主義の活動家の用語で組織の単位を指す。
例えばかつての学生運動の時代ならば「東大細胞」といえば、上部の組織が作った東大の活動家の組織を意味した)

直近でマレーシアでの暗殺事件でも、そのような現地で一般のビジネスに従事していた工作員が協力していたことがマレーシア当局によって明らかにされている。

◇金正男暗殺は10名が関与、4人は国外へ 現地警察が初会見

このような工作活動には日本を舞台にしたものも当然ある。
このなかで確実に明らかになっているケースでもっとも知られているのは文世光事件(朴正煕大統領暗殺未遂事件)と数々の日本人拉致事件のテロ行為だ。
この二つの事件は金正日によって北朝鮮が行ったことが明らかにされただけではなく、この遂行にあたって朝鮮総連が組織関与していたことがほぼ確実となった。

しかし、拉致事件は当初は都市伝説まがいの「フェイクニュース」扱いされていた。

特に拉致事件では本国の意を受けた浸透工作員による犯罪だということが今や明らかになっているが、当時、この問題に触れるのは人権問題になりかねないとされ、アンタッチャブルなことになってしまっていた。
また北朝鮮や朝鮮総連と絡む出来ごとに関しては、人権問題ではないかとの非難が続き、結局はそのままうやむやになってしまうことが続いている。
なお、朝鮮総連は拉致事件についても文世光事件に関しても、現在までひとつの総括もできないままだ。もちろん被害者に謝罪もなされていない。

まだ拉致問題について都市伝説扱いされていたころ、それでも在日朝鮮人の良識派からは、意を決して血の滲むような内部告発はあった。元朝鮮総連の幹部であった張明秀もそのひとりであった。
彼は北朝鮮の帰国事業がいかに欺瞞に満ちたもので数多くの被害者をつくり、今でもなおそれを引きずり続けていること
(帰国事業で「本国」北朝鮮に帰った人々だけではなく、日本に残ったその家族はあたかも人質を取られえたようになり、本国およびその日本における在外公館である朝鮮総連の意向に逆らえない)、
さらに朝鮮総連が北朝鮮の指導の下、どのような非合法な行為に手を染めているかを赤裸々に暴露した。

なお、この張明秀の著作の編集者で、あわせて朝鮮総連とそれを擁護する左派リベラルの批判を当時行っていたのは、映画評論家の町山智浩だ。町山は次のように書いている。

>>2へ続く
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