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宇宙新時代 月へ、再び

 アポロ計画以来となる、有人月探査が現実味を帯び始めた。各国の宇宙機関は今月、2020年代の実現に向けた具体的な工程表を発表した。国際宇宙ステーション(ISS)の参加国だけでなく、中国や民間企業の参入も見込んでいるのが特徴だ。日本はどう関わっていくのか。

 2020年代、月の軌道を回る新たな宇宙ステーションを建設し、30年ごろには月面で人が40日以上にわたって調査する――。

 国際協力で進める将来の探査について今月、こんな内容の「国際宇宙探査ロードマップ」が公表された。構想作りに関わったのは、日本や米国、ロシア、欧州のほか、中国や豪州を含む14の宇宙機関らのグループ(ISECG)。米国が昨年末、月探査に注力する方針を打ち出したことを受け、約4年半ぶりに内容を更新した。3月に東京で開かれる、45の国・地域が参加する第2回国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)での議論のたたき台となる。

 構想の中核となるのは、月軌道のステーションだ。ISSの日本実験棟「きぼう」(直径4・4メートル、長さ11・2メートル)より一回り小さい船内で、電力や空気、水を循環させる機能やロボットアームなどを備える。20年代前半から、数回に分けて構成パーツを月軌道に運んで建設。当初は4人が約30日間滞在する。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)月惑星探査データ解析グループの増田宏一さんは「予算的な実現性や計画の柔軟性を考え、こうした構成になった」と話す。

 人や物資を運ぶのは、米航空宇宙局(NASA)やロシアのロケットと宇宙船。ともに開発中で、これまでの宇宙船より熱防護や着陸技術が進化しており、20年ごろの初飛行を目指している。

 30年ごろには、ステーションから4人を乗せた着陸船を月面に降ろし、約40日かけて極域やクレーター、地下空洞などで、水などの資源や利用の可能性について調査する。月面では、原子力電池や太陽電池によって約1万キロ走れる探査車2台に分乗して、広いエリアを移動。集めた試料を分析して、地球にデータを送信後、再びステーションに戻る計画だ。

 一方、新たな宇宙船のテストや実験の施設として、ISSや16年に打ち上げられた中国の宇宙ステーション「天宮2号」の活用を見込んでいるが、米国は25年以降のISSの予算を打ち切る方針で、その後、民間に運営を移すかなどの道筋は見えていない。

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