中国企業が運営する文書共有サイトへの日本企業の内部文書の流出が止まらない。企業の情報漏洩を調査する会社によると、この半年余りで186社の文書がサイトに掲載されていた。特許情報の流出などにつながる恐れもあり、専門家は内部管理の強化を呼びかけている。

日本企業の内部文書も掲載されている文書共有サイト「百度文庫」
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日本企業の文書が掲載されているのは中国の検索サービス大手、百度(バイドゥ)が運営する文書共有サイト「百度文庫」。IT関連会社「クロスワープ」(東京)が調べたところ、2017年6月〜18年2月だけで186社の文書掲載が確認された。いずれの資料にも「機密」を意味する注意書きが記されていた。

文書が掲載されていた企業はメーカーからサービス業まで多岐にわたる。製品の設計図や社内研修で使われたとみられる製品機能の説明資料のほか、飲食店チェーンの接客マニュアルもあった。

百度文庫への日本企業の資料流出は13年にも問題化し、日本貿易振興機構が削除要請方法などをまとめてインターネットで公表した。その後も内部文書の流出は止まっておらず、ネット上で誰でも見られる状態が続いていることになる。

中国語で書かれた製品比較資料が掲載されていた都内の大手事務機器メーカーは、日本経済新聞の指摘を受けて削除を要請し、現在は見られなくなっている。メーカーの広報担当者は「公開情報のみで機微な情報ではなかった。ただ社外秘文書の流出は問題と認識している」と話した。

中国には同様のサイトが複数ある。文書がダウンロードされると、投稿者にネット通販などに使えるポイントが入る仕組みが多い。クロスワープ情報セキュリティ事業部の山下潤一事業部長は「中国の現地法人で配られた研修資料などを中国人従業員が小遣い目的で投稿するケースが多いとみられる」と話す。

百度は取材に対し「投稿者には他人の著作権などを侵害しないよう承諾を求めている」と説明。著作権侵害などがあれば文書を速やかに削除するほか、チェック態勢も強化しているという。

中国の法律に詳しい分部悠介弁護士によると、中国でも営業秘密の持ち出しは違法だが、刑事罰が適用されるのは被害金額などが大きい場合に限られる。サイトへの投稿が深刻な被害につながったと立証するのは難しく、刑事罰は歯止めになりにくいという。

内部資料の流出を防ぐには何が必要か。分部弁護士は「現地従業員を雇用する際の秘密保持契約の確実な締結や営業秘密の保護意識を高める社内セミナーを開くといった事前対策に加え、流出した場合は原因を究明し再発防止に努めるべきだ」と話している。

2018年3月1日 20:09
日本経済新聞
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