3/5(月) 16:30配信
【舛添要一の僭越ですが】 政治利用の五輪閉幕、東京は二の舞避けよ

 平昌五輪が終わった。日本人選手の活躍に日本中が沸いたが、政治利用や運営など多くの問題も残した大会であった。

 まずは、文在寅政権による五輪の政治利用である。南北融和を印象づけたが、金正恩の核・ミサイル開発を断念させることができなければ、結局は北朝鮮による時間稼ぎに加担したと批判されよう。さらに、両国が戦火を交えるような事態になれば、文在寅外交は失敗したことになる。

 2020年東京大会では、そのときの日本の政権による五輪の政治利用は避けなければならない。もちろんヒトラーが政治利用した1936年のベルリン大会のようなことはありえないであろうが、ソ連軍のアフガニスタン侵攻に抗議して西側がボイコットした1980年のモスクワ大会の例もある。

 五輪が国際政治に翻弄されることを忘れてはならない。主催都市(そして主催国)の判断が問われることになる。

 次は運営面である。第一は、気候条件である。極寒の平昌は、風も強い日もあり、競技環境としては好ましいものではなかった。特に真夜中に行われたジャンプは選手泣かせであるのみならず、観客にとってもたいへんであった。

 これには、IOCの財源の8割を占める放映権料の問題が背景にある。フィギュアはアメリカの、ジャンプはヨーロッパのゴールデンタイムに合せた時間設置がなされ、これが前者は午前中スタート、後者は夜中スタートという変則的な時間設定となったのである。IOCの財政状況が変わらない限り、2020東京も時差が引き起こす問題が起こる可能性がある。

 東京の場合は酷暑が問題である。高温多湿な気候の影響を最小限にせねばならない。私が都知事の時代から、都はこの問題に取り組んでおり、街路樹の緑を利用したり、アスファルトを特殊なものに変えたり、様々な努力を展開しているが、最高気温が35度を超え、ジメジメした日本の夏に競技をさせるのは選手にとっても、観戦者にとっても酷である。これも、放映権の問題で、気候の良い春や秋に移すのは困難である。五輪の商業化のツケは大きい。

 第二の運営面の問題はテロ対策である。とりわけ、サイバーテロが起こる可能性は高く、情報システムが機能しなくなると大会そのものが成り立たなくなる。1972年のミュンヘン大会ではテロリストが選手を人質にとったが、そのような事件があってはならない。2020東京の予算が大幅に膨らんだのは、セキュリティ対策費の計上があったからである。

 第三は輸送の問題である。私が都知事時代に出席した仁川のアジア大会では、ホテルと会場を結ぶバスの運行が不規則で大迷惑を被ったが、平昌でも同じことが繰り返された。多くの人が、寒風の中、凍える思いで辛抱強く待たざるをえなかったようだ。

 まずは、選手を選手村から競技会場へ迅速、快適に運ばねばならない。豊洲新市場への移転が遅れたために、選手村と競技場を結ぶ環状2号線が間に合いそうにない。代替案を考えるしかない。観客の移動もまた大問題である。

 第四はボランティアの確保である。平昌では寒さと待遇の悪さが理由で、多くのボランティアが直前に辞退してしまった。東京では外国語のできるボランティアを大量に確保する必要がある。今から準備する必要がある。酷暑なので健康管理も重要だ。

 第五は感染症対策である。平昌ではノロウイルスが猛威をふるった。夏の東京では、デング熱などへの対応が不可欠である。

 第六はバリアーフリーの街づくりであるが、これもまだ十分ではない。様々な障害を持つ人への配慮、また英語表記や無料Wi-Fiの整備など、2020年までに解決すべき課題は山積している。

 2020東京大会成功のために、超えなければならないハードルは実に多い。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180305-00010001-socra-pol