あの日、1人の生徒が、行方不明になった。
担任教師は、他の生徒、他の教師、校庭に避難してきた人達に
訪ねて回る。しかしその担任教師には、クラスの他の大勢の生徒の
管理の任務もある。
クラス担任を持たない生存教師が、行方不明生徒の捜索を担当する
事となる。何度も校舎に入り、その生徒の名を呼ぶ。
何度も何度も何度も何度も。
しかし行方不明生徒は、発見できない。
校庭に避難していた他の生徒達は、その場に座り続けた。

やがて教師達は、三角地帯への移動を決断する。

 生存教師「あの子はもしかしたら山に行ったのかも。探してきます。」
 教頭「ああ、頼んだ。だが山は危険だ。気をつけてくれ。私は土手を見てくる。
    その後に我々は三角地帯に向かう。」
 生存教師「はい。」
  ・
  ・
  ・
 教頭「さぁみんな、立って。これから三角地帯へと移動します。」

最適解の選択は、ほんの10分、遅れてしまった。
すぐ目の前にあった、全員生存への道。その歩みは足踏みさせられて
しまった。1人の行方不明生徒によって。


生存教師は、裏山で行方不明生徒と再会する。

 生存教師「なんでここにいる!」
 行方不明生徒「・・・・」
 生存教師「いつからここにいる?」
 行方不明生徒「校庭に避難してた時、トイレに行くといって
        そのまま山に登りました。」
 行方不明生徒「みんなは、みんなはどうなったの?」
 生存教師「・・・・・」

・なぜ、生存教師の服は濡れていなかったのか。
・なぜ、生存教師は沈黙し続けるのか。
・なぜ、校長は携帯を破棄したのか。
 なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、

上記物語は、考えうるイチ仮説に過ぎない。
ただただただただ私は、FACT(4W2H&WHY)を知りたい。
生存教師とともに裏山を超えた自動車整備工場に現れた生徒は、
当時小学校3年生。この春には高校3年生になる年齢だ。
もし亡くなった児童の保護者が、真に「51分間の真実」を
知りたいのなら、彼の51分間を知る必要があるだろう。