◆東大の倍以上の予算をかけた沖縄「オイスト」の未来

沖縄本島の有数のリゾート地として知られる恩納村(人口約1万人)に、沖縄科学技術大学院大学のキャンパスがある。
この大学は2011年11月、政府がスポンサーとなり特別法を根拠に私立大学として設立された。

世界最高水準の科学技術の教育、研究を行うことにより、「沖縄の振興と自立的発展」と「世界の科学技術の発展」の二つに寄与することを目的としている。
英語名は「Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University」といい、略して「OIST」(オイスト)と呼ばれる。

学部の壁のない組織で、学内の公用語は英語。学生・教員の半分以上は外国人だ。
5年一貫制の博士課程のみで、現状では教員1人に学生2人という比率で、博士号取得を目指す。

写真:上空から見たOISTの建物
https://i.imgur.com/4rT7KTD.png

■13年間で予算1787億円

2005年から17年までの13年間累計で、施設整備も含め、沖縄振興予算の枠から1787億円強の予算を費やしてきた。
17年度予算では、65人いる主任研究者1人あたり2億円を超える研究費等を手当てしている。東大の倍以上だ。

設立から6年がたち、この2月に、OISTで初めて、博士課程修了生に学位を授与する学位記授与式が大学講堂で開催された。
いわば「卒業式」である。

学位記授与式では、学生や教授は、ヨーロッパで大学が誕生した時代に由来する伝統のアカデミックドレスをまとった。
背中のフードは、博士課程修了生のみが着用することができる。

指導教官が修了生の研究や人物について短くコメントし、学長が14人(日本人は2人)に博士号を授与した。
1997年のノーベル物理学賞受賞者の一人であるスタンフォード大学のスティーブン・チュー博士が来賓として力強い祝辞をした。

写真:式典後に喜びを分かち合う修了生
https://i.imgur.com/c90nIeU.png

■大学を核とした地域振興

OISTのもう一つの設立目的である「沖縄の振興と自立的発展」は、これから本格化することが期待される。
17年に着任した新学長のピーター・グルース氏は、前職でドイツを代表する学術研究機関であるマックス・プランク協会の会長を長く務めた人物だ。

グルース学長就任後、沖縄振興開発金融公庫はOISTと「産学連携に係る協力推進に関する覚書」を締結した。
この3月には、OISTが主催する「沖縄イノベーション&アントレプレナーシップサミット2018」が開催され、世界各地の起業家、ベンチャー投資家、研究者などが集まり、起業家の育成・誘致などについて発表が行われた。

大学を核とした地域振興は有望な手法だ。
世界的なネットワークを持つOISTの今後の動向・成果に注目していきたい。

※記事を一部引用しました。全文はソースでご覧ください。

毎日新聞 2018年3月23日
https://mainichi.jp/premier/business/articles/20180322/biz/00m/010/016000c#cxrecs_s