麻酔を使って痛みを和らげる「無痛分娩」をめぐり、厚生労働省の研究班は29日、安全な診療体制についての提言をまとめた。無痛分娩で出産した女性が死亡するなどの事故が起きており、研修を強化したり、医療体制や実績を外部に公表したりすることを求めた。今後学会などを通じて各医療機関に呼びかける。

無痛分娩は出産時の痛みを軽くし、産後の回復が早くなるメリットがあるとされる。一方で麻酔によるリスクも指摘され、日本産婦人科医会によると、2010年以降、処置を受けた14人が死亡。十分な知識や技術を持たない医師が処置を担当し後遺症が残った事例も相次いでいる。

研究班はこうした事故を防ぐ対策を検討。提言では無痛分娩に携わる医師らが麻酔の知識や技術を学び、維持していく必要があると指摘。医療機関に対し、常勤医から「麻酔管理者」を選んで責任を明確にし、安全な麻酔診療や救急蘇生の講習を定期的に開催することを求めた。

無痛分娩の説明や診療実績、急変時の救急体制、講習会の実施歴などの情報をインターネット上に公開することも促した。現状ではこうした情報が公開されている医療機関は一部にとどまり、一律に情報公開を求めることで妊婦やその家族がどの施設で無痛分娩をするか選びやすくする。

今後、日本産婦人科医会など無痛分娩に関わる学会や団体がワーキンググループを立ち上げ、具体的な事故の防止策などについて検討を進める見通しだ。

ただ提言に強制力はなく、どこまで対応するかは医療機関に委ねられる。どの程度安全を担保できるかは不透明だ。研究代表者で北里大学病院の海野信也院長は「(提言で)無痛分娩の安全性を確保できる体制づくりへの第一歩を踏み出せたが、まだやるべきことはたくさんある」と話した。



日本経済新聞 2018年3月29日 17:30
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO28745660Z20C18A3CR8000