林芳正文部科学相は30日付で、必修科目として主権者教育を扱う「公共」や近現代の日本史と世界史を融合させた「歴史総合」の創設など、大幅に科目を再編した高校学習指導要領を告示した。全教科で「主体的・対話的で深い学び」も掲げ、授業改善を促した。改定案公表後の意見公募では、歴史用語削減を求める声や領土の教え方に懸念もあったが、目立った修正はしなかった。

 2022年度の新入生から順次実施する。大学入試改革を踏まえ、英語で「読む・聞く・話す・書く」の4技能育成を重視するなど、55科目中27科目が新たに設けられたり、内容を見直したりした。

 総則では、予測が難しいこれからの社会で求められる人材の育成に向け、社会と学校との連携を目指し、思考や判断、表現の力を伸ばすことを大きなテーマとした。文科省は、授業の指針となる教員向けの指導要領解説を夏にも公表する。

 2月14日から今月15日までの意見公募には、計2397件が寄せられた。歴史科目で暗記に偏った学習を見直すため「用語削減の方向性を示すべきだ」との意見があったが、文科省は「具体的な歴史事象に触れ、興味を持って学ぶことが重要」として修正しなかった。

 地理歴史で竹島(島根県)と尖閣諸島(沖縄県)を「固有の領土」と明記したことに「日本政府の主張を一方的に教えるのは不適切」との意見も上がったが、文科省は「わが国が正当に主張する立場を理解することは主権国家の公教育では当然」との見解を示した。

 科目の大幅再編が「生徒や教職員に負担を強いる」との声には「19年度から移行期間を設けて必要な準備を進める」として理解を求めた。一方で「外国語教育でグローバルな視点を示す必要がある」との意見に応じ、外国語の項目に「社会がグローバル化する中で」との記述を加えた。

2018/3/30 5:00
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28747180Z20C18A3CR8000/