http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-43593160

2018/03/30
チェリー・ウィルソン記者 BBC「ニュースビート」

広告が「人種差別的」だと批判を集め、取り下げや釈明に追われた大手ブランドが相次いでいる。
スウェーデンの衣料品大手H&Mは今年1月、黒人の子供が「ジャングルで一番クールなサル」と書かれたフード付きスウェットシャツ(パーカー)を来た広告写真で謝罪に追い込まれた。

その数カ月前には、米日用品メーカー「ダヴ」が、黒人女性がシャツを脱ぐと白人女性に変わるCM動画について謝罪している。

最近では、オランダのビール会社、ハイネケンが出した「ハイネケン・ライト」のCM動画を、歌手のチャンス・ザ・ラッパーが「ひどく人種差別的」だと呼び、「注目を集めるため、明らかに人種差別的な広告をわざと出している」と批判した。
チャンス・ザ・ラッパーの主張に真実味はあるのだろうか。

クリアリーPRマーケティング・アンド・コミュニケーションズのポール・マッケンジー=カミンズ社長は、一部のブランドは人々の関心を集めるために人種問題を使っている、と考えている。

マッケンジー=カミンズ氏は、「広告会社で働く人たちは賢い人たちだ。高い技能と莫大な予算を持っていて、顧客ブランドの認知度を上げるプレッシャーは高まる一方だ。市場は非常に競争が激しく、小売分野でこれほどまでに競争が激化したことは今までない。何らかの手で、人々に目や耳を向けてもらう必要がある」と指摘した。

広告業界で11年間のキャリアを持つマッケンジー=カミンズ氏は、このような方法は最終的にはブランドの評判を傷付けることになると考えている。
「広告が意図的に挑発的で、メディアの注目を集めようとしているという点で、チャンスさんはある程度正しい。その面では効果は出ている。その面では、というのが重要だ。結局はそこに行き着く。彼らが思っている以上に、最終的にはブランドに傷が付く」

英国で広告に関する基準を定める広告基準協議会(ASA)によると、2013年以来、956の広告について人種差別だとする苦情が2396件寄せられたという。
このうち12件について正式な調査が行われ、10件で苦情の内容が認められた。ASAには、基準に違反していると判断された広告を禁止する権限を持つ。
最近の例では、ブックメーカー(賭け屋)のパディ・パワーが出した、プロボクサーのフロイド・メイウェザー氏の写真に「いつも黒に賭けろ」という言葉を組み合わせた広告が問題となった。
ASAは広告を禁止する理由として、「人種の面で非常に不快な思いをさせる可能性が高い」とし、パディ・パワーに再発防止を求めた。

ブランド構築を支援する会社「シー・ビルズ・ブランズ」の創業者、クビ・スプリンガー氏は仏化粧品大手ロレアルや音楽賞「モボ・アワード」と協働した経験があるが、広告が出る前に多くの人が目を通しているものの、広告会社内の「ダイバーシティー(多様性)の欠如」によって、問題が気づかれない可能性があると指摘した。
「(ブランドが)罪のない間違いだとまでは言わないが、チャンス・ザ・ラッパーさんのような、意図的に人種差別をしている、という主張も行き過ぎだ。管理職や経営者のレベルで多様な人々がいる必要がある。人種だけでなく、LGBT(性的少数者)や女性で、『これは特定の層を不快にさせるかもしれないので再検討するべきかもしれない』と指摘できるような人たちだ」
(リンク先に続きあり)

左から順に、ハイネケン、H&M、ダヴの広告
https://ichef.bbci.co.uk/news/410/cpsprodpb/603E/production/_100583642_index.jpg