膵臓の検体、効率的に採取 諏訪地方の7社が内視鏡用の針開発
4月7日
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20180407/KT180406BSI090012000.php

 諏訪地方のメーカー7社でつくるグループ「SESSA(セッサ)」が、膵臓(すいぞう)の腫瘍の状態などを調べるため、超音波内視鏡と組み合わせて検体の採取に使う新たな針(生検針)を開発した。狙った病変部の検体について、必要な量を採取でき、診断の効率化と精度の向上が期待できるという。今後、安全性の確認などを進め、販路を持つ医療機器メーカーと組んで数年後の商品化を目指す方針だ。

 開発した針は外径0・9ミリで、結晶が細かく力がかかっても壊れにくい「超微細粒鋼(りゅうこう)」でできている。中は空洞になっており、先端から5ミリほどの位置に横穴が開き、縁が刃になっている。針を膵臓に突き刺して病変部に横穴が届くと、針の中に組み込んだ爪状の部品を前後にスライドさせ、引っ掛けた検体を刃で切り取る仕組みだ=イメージ図。

 SESSAに加わる医療機器開発などのナノ・グレインズ(諏訪市)によると、腫瘍の良性、悪性の診断や、適切な治療法の選択には一定量の検体が必要だが、膵臓は他の臓器や骨に囲まれ、検体を採るのが難しい。既存の生検針は先端をとがらせた筒状で、膵臓に突き刺して正面から検体を穴に取り込む仕組み。しかし、構造上、病変部以外の組織も一緒に採れてしまうため、十分な量の検体を確保するのに手間がかかるといった課題があるという。

 大手医療機器メーカーで生検針の開発を担当した経験があるナノ・グレインズの技術者が新たな機構を考案し、特許を出願。いずれもSESSAに参加する、自動車部品製造などの小松精機工作所(諏訪市)が超微細粒鋼を製造し、金属微細加工の高島産業(茅野市)、研磨加工の共栄電工(岡谷市)、金属部品加工の共進(諏訪市)、精密ばね製造のミクロ発條(同)、精密部品加工の松一(同)が部品の切削、研磨、接合などを分担した。

 ナノ・グレインズによると、膵臓用の生検針の世界市場は約50億円と見込まれる。同社の鈴木啓太医療事業本部長は「新たな針の性能や診断への効果などを検証し、改良を重ねて商品化に結び付けたい」としている。