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4月8日 5時04分
ことし6月から導入される「司法取引」について、最高検察庁は、捜査協力への見返りとして容疑者の処分を軽くすることに国民の理解が得られる事件に限って行うなどとする、当面の運用方針をまとめました。

ことし6月1日から導入される「司法取引」は、容疑者や被告が共犯者などの犯罪について捜査に協力すれば、見返りとして検察が起訴を見送ったり求刑を軽くしたりする制度で、最高検察庁は導入を前に当面の運用方針をまとめ全国の検察庁に通知しました。

「司法取引」の対象となるのは、汚職や、談合などの企業犯罪、それに薬物などの組織犯罪ですが、運用方針では対象事件の中でも、従来の捜査手法では重要な証拠を得ることが困難で、捜査協力への見返りとして容疑者などの処分を軽くすることに国民の理解が得られる事件に限って行うとしています。

また「司法取引」を行う際には、検察官と容疑者や被告、それに弁護士の3者が合意することが条件となっていますが、交渉の順序については法律で定められていません。

これについて運用方針では、はじめに弁護士が捜査協力の内容を検察側に提示することが一般的だとしたうえで、取り調べの中で検察側から「司法取引」に言及すると、裁判で「利益誘導があった」と主張される可能性があるとして、行わないよう求めています。

最高検察庁は「国民の理解を得ながら時間をかけて制度を定着させたい」と話しています。

「司法取引」運用の詳細は

「司法取引」は、企業犯罪や組織犯罪で上層部の関与を解明する新たな捜査手法として期待される一方、うその供述で無実の人を巻き込み、えん罪を生み出すおそれも指摘されています。最高検察庁は、こうした指摘を踏まえて今回の運用方針をまとめました。

「司法取引」の対象となる事件は、汚職や脱税、談合、それに振り込め詐欺などの知能犯罪と、薬物や銃器の犯罪で、検察官と容疑者や被告、それに弁護士の3者が合意することが条件になっていますが、交渉の順序などについては法律で定められていません。

これについて運用方針では、容疑者からの申し入れだけでは取り引きの交渉に入らず、検察官か弁護士の申し入れに基づいて交渉を始めるとしています。

そのうえで、はじめに弁護士が捜査協力の内容を検察側に提示することが一般的だとしていて、検察官は、その内容について弁護士から可能な範囲で聴き取ったうえで交渉を始めるかどうか判断すべきだとしています。

検察官は、容疑者から得られる共犯者についての供述や証拠の重要性や、共犯者の組織内での地位などを考慮し、事件によっては起訴を見送ったり大幅に軽い求刑を行うことも柔軟に検討するとしています。

一方で被害者がいる事件では、処罰感情にも配慮する必要があるとしています。また検察官が弁護士にいったん提示した条件は、基本的にその後の交渉で譲歩すべきでないとしています。

そして交渉の経過については、その概要を書面にまとめ記録に残すよう求めていますが、「自由な協議が阻害されないよう配慮する必要がある」として、検察官が交渉の過程で容疑者などから事情を聴く様子については、基本的に録音・録画することは、なじまないとしています。

「司法取引」の交渉が途中で決裂した場合、その過程で得た供述などを証拠として使うことはできませんが、検察側が裏付け捜査などで得た新たな証拠は交渉が決裂しても、裁判で使うことが法律で認められています。

しかし最高検察庁は、交渉が決裂した場合にこうした証拠を使えば、検察の姿勢に不信感を持たれかねないとして、基本的には裁判では使わないとしています。

最高検察庁は「弁護側との協議では誠実な対応に努め、国民の理解を得ながら時間をかけて制度を定着させたい」と話しています。