全国の県庁所在地と政令市で、ギョーザの購入額日本一の座を巡り、宇都宮市と静岡県浜松市が激しく競り合う中、堺市が昨年、初めて3位に食い込み、地元で話題を呼んでいる。

 宇都宮、浜松のように名物と呼べる〈ご当地ギョーザ〉はなく、市民も「理由がわからない」と首をかしげるが、「全国にアピールできるチャンス。堺で『餃子の会』を」との声も。果たして上位2市を脅かす存在となるか――。

■大躍進

 「ニュースで3位と知ってびっくりしました。堺では友達が集まると、ホットプレートで焼くギョーザのパーティーを開く家が多いからでしょうか」。堺市西区の持ち帰りギョーザ専門店「龍華山りゅうかざん」で、2箱を購入した主婦(47)は笑顔で語った。

 堺でギョーザが話題となるのは、総務省が1月に2017年の家計調査を発表したのがきっかけだ。

 外食、冷凍を除き、スーパーや専門店などで販売された生と焼きのギョーザの1世帯(2人以上)あたりの購入額を集計したところ、堺市は3092円に。1位の宇都宮市4259円、2位の浜松市3580円に続いて3位となった。08年は1538円と、40位にとどまっていたが、15年は7位に浮上。翌年は2285円で17位に沈んだものの、1年でトップスリーの一角を占める躍進を遂げた。

 市内で4店舗を展開する同店の販売個数も、昨年急増したといい、毛穴けな貴祥社長(41)は「全国3位と聞いて、なるほどと思ったけれど、理由はわからない」と苦笑する。

■育児の味方?

 宇都宮、浜松はいずれも〈ご当地ギョーザ〉がある。51円差で4位につけた京都市は全国チェーンの中華料理店「餃子ぎょうざの王将」の発祥地と、上位の市はギョーザと縁が深い。だが、堺にはそうしたものがない、とされる。

 愛好家らでつくる一般社団法人・焼き餃子協会(東京)の小野寺力代表理事は「『ギョーザのイメージが希薄な堺がなんで3位なの』と、会員の間でも話題になった」と打ち明け、「共働きの子育て世帯が増えて購入額増加につながったのかもしれない」と推測する。

 市は、「子どもを産み、育てやすいまち」を掲げ、17年度は、3人目以降の保育料を5歳まで無償化するなどの、子育て支援策を打ち出した。

 市によると、認可保育施設に入れない待機児童数はここ数年増加しており、小野寺代表理事は「肉と野菜、炭水化物をバランスよく取れ、手軽に調理できるギョーザは子育て世代の強い味方になる」とする。ただ、因果関係については不明だ。

■売り込み

 「龍華山」の毛穴社長は今回の躍進を受け、「古墳や文化財以外で堺を全国にアピールできるチャンス」とし、「同業者に呼びかけて『餃子の会』を作り、堺のギョーザの定義を作って広め、宇都宮、浜松を追い抜きたい」と意気込む。

 竹山修身市長も2月の定例会見でこの話題に触れ、「堺には上神谷にわだに米という米があり、泉州では様々な野菜が栽培されている。それらと合わせて堺のギョーザをアピールしていければ」と力を込めた。

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