https://www.cnn.co.jp/m/fringe/35117386.html

2018.04.09 Mon posted at 11:29 JST
(CNN) 100年にわたって考古学者を悩ませてきた謎がこのほど、米連邦捜査局(FBI)の科学捜査によって解明された。鍵となったのは、4000年前のミイラの歯から抽出したDNAだった。

1915年にディール・エル・バーシャの共同墓地で、切断されたミイラの頭部が発見されて以降、考古学者は、この頭部が誰のものなのか頭を悩ませてきた。この墓は知事夫妻のものだったことは判明していた。しかし、埋葬物の全てがボストン美術館に1920年に収納されて以降も、この頭部が夫のものか妻のものか分かる人はいなかった。

しかし、このたび、FBIの調査によって、頭部は男性のものであり、知事本人のものであることが確実となった。

ボストン美術館の学芸員リタ・フリード氏は、今回の出来事について、100年にわたる考古学の謎が解けただけではなく、DNA検査の技術的進歩の証明でもあると指摘。「4000年前の歯からDNAを再構築することができるならば、ほとんど何からでもDNAを再構築できるのではないか」と述べる。

頭部が非常に古く、発見された場所が砂漠だったことから、DNAの抽出は特に難しいとみられていた。FBIの科学捜査官オディール・ロレイル氏によれば、DNAの劣化は暑いとより早く進む。

頭部は約9メールの穴から見つかった。墓場は荒らされており、盗掘者は宝石や貴金属の大部分を持ち去っていた。その過程で、夫婦の遺体も移動させられていた。そして、切断された頭部が知事の棺(ひつぎ)の上で発見された。

頭部の身元を突き止めようとして行ったさまざまな試みによって、さらに頭部は損傷を受けた。

2000年代初め、ボストン美術館は、墓と埋葬品に関する展示の準備に向けて身元を突き止めようとする取り組みを再開させた。

2005年にはCTスキャンを行ったものの、男性か女性かの区別をつけることはできなかった。4年後、頭部から歯を引き抜きDNA検査を実施しようとした。エナメル質に守られているため、歯は最も汚染されにくい場所のひとつだからだ。しかし、成果はなかった。

こうして、FBIに案件が持ち込まれた。ボストン美術家のフリード氏もFBIに声をかけたことについて「極めてまれ」と指摘する。

FBIによれば、興味を持ったのは、ミイラの歴史的な重要性というよりは、その科学的な困難さのためだった。FBIが取り扱う証拠品はたまたま犯罪現場と関係するであろう日用品であることが多い。そうした証拠品は過酷な状況にあることも多く、そのため、FBIはミイラの頭部について、汚染物質からDNAを抽出する訓練のための好機だと考えた。

2016年、FBIのロレイル氏の元に歯冠が届けられた。ロレイル氏は以前にもタイタニック号で溺死した1歳1カ月の子どもや13万年前のホラアナグマのDNAを分析したことがあった。

ロレイル氏は、歯に穴をあけ、粉を収集し、粉を化学溶液に溶かして、機械を使ってDNAを配列し、性染色体の割合を調べた。ここから、ロレイル氏は頭蓋骨(ずがいこつ)が男性のものだと結論付けることができた。

ロレイル氏は、今回の発見について、最終的に性別が判明しただけではなく、「美術館と科学による共同作業の素晴らしい見本だ」と喜びを語った。

4000年前のミイラの性別がFBIの調査によって判明した
https://www.cnn.co.jp/storage/2018/04/08/f12f673b7c00b22042c01b7c4efab7c2/t/320/180/d/djehutynakht-head.jpg
ミイラの歯
https://www.cnn.co.jp/storage/2018/04/08/5908b4ab8bd058c402ba51a06b9c76ec/t/320/180/d/djehutynakht-tooth.jpg