https://jp.reuters.com/article/column-facebook-idJPKBN1HJ0BC

2018年4月12日 / 05:27 / 8時間前更新
Robert Cyran

[ニューヨーク 11日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 同社の米フェイスブック(FB.O)の株価は、ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)による議会証言を好感して大幅に上昇した。データ利用法について上下両院の議員らが浴びせた質問は、概ね要領を得ない内容だった。このことは、同社が難を逃れたというより、むしろリスクが高まったことを意味している。

多くの議員はフェイスブックの仕組みをほとんど理解していなかった。ユタ州選出のオリン・ハッチ上院議員(84)は、同社が広告で収入を得ているのを知らない様子だった。また、同社が携帯電話のマイクをターゲティング広告に利用しているのはなぜか、と質問した議員が複数いたが、そうした実態はない。

各議員の質問時間が上院5分、下院4分と限られていたこともあり、ザッカーバーグ氏は余裕で切り返すことができた。これを見た投資家は、フェイスブックが今後も小幅な変更を加えるだけで自主規制を続けられると受け止めた。

しかし、過去に行われた住宅ローンや営利教育、医療制度を巡る議会公聴会でも、今回と同様の誤解や無知が露わになったが、だからといってその後規制が導入されなかったわけではない。フェイスブックを含む一連の公聴会で露わになったことがもう1つある。すなわち、金融であれデータ利用であれ、専門家は、一般人にはとうてい受け入れ難い業界標準の慣行に慣れ切ってしまうということだ。公聴会でその慣行が明らかになったが最後、しばしば採られる対応は新法の施行だ。

ザッカーバーグ氏が大きな功績を残してきたのは事実だが、公聴会では、所詮は別世界の住人であることが印象付けられる場面もあった。フェイスブックは独占企業かと問われた同氏は「私にはそういう感じがしない」と答えて失笑を買った。同氏はまた、ユーザーはターゲティング広告を好むためデータ収集は有用だと述べたが、調査ではユーザーがこうした広告を不気味に思っていることが分かっている。

ザッカーバーグ氏は大きな代償を伴いそうなミスを2つ犯した。平均的なユーザーは、個人情報保護に関する利用規約を読まないことと、フェイスブックが自社サイト上のコンテンツに責任を負っていることを認めたのだ。これらの発言は、インターネット企業が往々にして弁解に使う2つの論点と食い違う可能性がある。つまり(1)ユーザーはデータがどう利用されるか分かっている(2)ネット企業が提供しているのはプラットフォームだけで、それを利用するのは他の人々だ──という弁解だ。

これにより、個人情報利用の規約にもっと明確な条項を盛り込むよう義務付ける法令の制定、あるいは規制の強化に道が開かれた。新法を制定する場合にはおそらく、欧州連合(EU)が来月施行する厳しい法令に似た内容となるだろう。

●背景となるニュース

*フェイスブックのザッカーバーグCEOは11日、米下院エネルギー・商業委員会の公聴会で、消費者データの利用について証言した。10日には上院の司法委員会と商業科学運輸委員会の公聴会で証言した。