政府が放送番組の「政治的公平」を定めた放送法4条や外資の参入規制を撤廃する放送制度改革を検討している。これまでも過去に改革が叫ばれたことはあったが、ここまで大規模な内容は例がない。これまでの経緯を振り返る。

「竹中懇」に源流

 今回浮上した放送制度改革方針案の源流として、2006年の通称「竹中懇」を思い出す関係者は多い。小泉内閣で総務相だった竹中平蔵氏が私的に設けた「通信・放送の在り方に関する懇談会」のことだ。竹中氏は当時「なぜインターネットで生放送が見られないのか」などと発言。規制や慣習に守られた放送業界が、通信との融合に消極的だとして、これを改めようとした。

 言論の多様性を守るために、少数の経営者によるメディア支配を防ぐ「マスメディア集中排除原則」を緩和しようという議論が起きたのも、このときだ。国際的な競争力を持つ総合メディア企業を育てたいとのねらいがあった。

 この時の「メディア改革」は結局、尻すぼみに終わり、日本の放送制度が大きく変わることはなかったが、竹中氏らによる当時の構想は以降もことあるごとに取りざたされてきた。番組を制作するソフト部門と、放送設備を保守、管理するハード部門を分けて、競争を促そうとする考え方もその一つだ。「ソフト・ハードの分離」や、マスメディア集中排除原則の撤廃は、今回の改革方針案でも再浮上している。

 ただ、番組に政治的公平や「事実をまげない」ことなどを求めてきた放送法4条の撤廃が議論になったのは、今回が初めてといっていい。特に、近年は4条をめぐって政治とテレビ局との間に緊張が走ることが多かっただけに、より波紋が大きくなっているともいえる。

■議論呼んだ「高市発言」

 2016年には、放送行政を所管する高市早苗・総務相(当時)が、放送局が政治的な公平性を欠く報道を繰り返したと政府が判断すれば、「何の対応もしないと約束するわけにはいかない」と発言。4条違反で電波停止を命じる可能性に言及し議論になった。2015年には、自民党がテレビ朝日とNHKの幹部を会議に呼び、コメンテーターの発言や過剰な演出が、放送法違反にあたるのではないかとして事情を聴いた。

 このため、一連の経緯を重く見た国連特別報告者のデービッド・ケイ氏(米カリフォルニア大教授)が「政府のメディア規制の根拠になりうる」として4条の廃止を訴えたこともあった。

 だが、自民党の石破茂元幹事長は「『偏った放送をやっていい』ということは、民主主義にとって健全なことか」と4条撤廃案を批判。野田聖子総務相も「公序良俗を害するような番組、事実に基づかない放送が増加する可能性が考えられる」と述べ、民放各局からも反対の声が上がるなど、撤廃案には大きな反発が起きている。

 16日の規制改革推進会議で示される素案で、政府がどんな方向性を示すのかが注目される。(田玉恵美)

2018年4月14日05時33分
朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASL4F75TDL4FUCLV01L.html

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