https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180414/k10011403371000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_016

4月14日 14時31分
シリアで混乱が広がってから7年。トランプ大統領は先月「われわれは近くシリアから出ていく」と早期徹底を匂わせていました。アメリカのシリア政策は何を目指しているのでしょうか。「一貫性がなく、迷走している」との批判の声もーーー。

「アラブの春」が泥沼の内戦に

2011年3月、いわゆる「アラブの春」と呼ばれた中東の民主化運動は、シリアにも波及し、アサド政権の打倒を求める反政府デモが全土に広がりました。

そして、各地でアサド政権と反政府勢力が激しく衝突する本格的な内戦となり、アメリカは反政府勢力を、ロシアやイランはアサド政権側を支援し、代理戦争の様相を呈するようになりました。

軍事行動見送ったオバマ政権

2013年8月、反政府勢力の拠点、東グータ地区で、化学兵器を使った攻撃が行われ1000人前後が犠牲となると、オバマ前政権は、アサド政権が使用したとして、軍事行動に踏み切る構えを見せ、緊張が高まりました。

しかし、ロシアがアサド政権に化学兵器を廃棄させることを提案した結果、アメリカは軍事行動を見送りました。その結果、アサド政権は廃棄作業を進めることで国の代表としての立場を維持することになりました。

ISの壊滅掲げたトランプ政権

こうした中、混乱に乗じて過激派組織IS=イスラミックステートが急速に勢力を拡大して、国際社会にも大きな脅威となりました。

これに対し、アメリカは2014年9月から空爆に乗り出したほか、地上で戦うクルド人勢力を支援するようになります。

去年誕生したトランプ政権は、アサド政権の打倒を事実上、脇に置いてISの壊滅を政権の最優先課題の1つに掲げました。

就任3か月でのミサイル攻撃

トランプ政権は、シリアへの関与の度合いを弱めるのではないかという見方も出るさなかの去年4月、反政府勢力の拠点である北部イドリブ県で化学兵器を使った攻撃が報告されます。

すると、就任してからおよそ3か月のトランプ大統領はアサド政権によるものと断定し、突如、シリア軍の施設へのミサイル攻撃に踏み切り、世界に衝撃を与えました。

ただ、この攻撃は限定的なものにとどまり、アサド政権は、反政府勢力に対する攻勢をさらに強めていきました。
去年10月にはISが「首都」と位置づけてきたラッカを奪還し、ISは事実上、崩壊しました。しかしアメリカは、ISが力を失ったあとにイランなどが影響力を拡大するのを防ぐために、今後もシリアでの展開を続ける方針を示していました。

ところがトランプ大統領は先月29日、「われわれは近くシリアから出て行く」と発言しシリアからのアメリカ軍の早期の撤退を目指す考えを示しました。

こうしたさなか、今月7日にダマスカス近郊の東グータ地区で化学兵器の使用が疑われる攻撃が起きると、トランプ大統領はアサド大統領らを強く非難し、「大きな代償を払うことになる」と警告。今回、軍事攻撃に踏み切りました。

この7年間のアメリカのシリア政策に対しては「一貫性がなく、迷走している」との批判の声もあり、中東地域の混乱に拍車をかけているという見方があります。