不法埋め立て、市もお手上げ 福岡・春日の産廃投棄地 「環境改善」協定を盾に
2018年04月20日 13時36分
https://www.nishinippon.co.jp/sp/nnp/anatoku/article/410097/

 福岡市のベッドタウンとして人口が増え続ける福岡県春日市。新興住宅街に隣接する山林で「私有地が不法に埋め立てられている」という情報が寄せられた。市も黙認状態という。背景を追うと、1枚の「協定書」を都合よく解釈する開発業者と、業者を指導できない行政の姿が浮かび上がった。
 ヘリで上空から市街地を見下ろしながら進むと、木々が伐採され地面がむき出しになった山が現れた。ゴルフ場らしきものも見える。場所は同市上白水。すぐ横に住宅地や商業地も広がる。地上に降り、地権者という男性数人に案内してもらった。
 山肌はえぐれ、土砂が高く盛られた場所もある。男性は「元の地面より数メートルも高くなった。どこが自分の土地か分からない」。別の地権者は小屋を残し、周囲を埋め立てられた。小屋内には雨で土砂が流れ込み、置いていた農機具も使えなくなったという。
 工事を進めているのは、この山林にコースがあるゴルフ場「九州カンツリー倶楽部」の経営会社。取材に応じた同倶楽部会長の男性は「市からも地権者からも許可を得ている」と話し、違法性を全面否定した。どういうことなのか。
 発端は廃車など産業廃棄物の山林への不法投棄だった。1980年ごろには手が付けられないほどの量になっていた。山林の地権者は200人以上に分かれ、土地の境界もあいまい。被害者が特定できないなどの問題もあり、行政も20年近く何の手だても打てないまま“放置”されてきた。
 長年の懸案に一肌脱いだのがゴルフ場の経営会社だ。平地にもコースを持っていた同社は平地側を民間業者に売却し、その費用で山林の地権者から土地を買収。産廃を撤去して山側にコースを移設する計画を提案した。産廃に悩まされた地権者側と市はこれに乗り、3者で2004年、「協力して環境改善を図る」とする協定書を交わした。
 この計画について、連絡がついた地権者約107人のうち、賛成したのは71人。地権者全体の3分の1にとどまるため、協定書には「工事にあたって地権者の同意を得ること」と明記された。ゴルフ場側は協定書を元に工事を進め、対象の23万平方メートルのうち大部分の産廃撤去を終えた。