長崎市天神町の九州新幹線長崎(西九州)ルートのトンネル工事現場で、戦時中に使用された防空壕ごうが見つかり、地元住民や被爆者などでつくる市民団体が「歴史的に貴重な防空壕だ」として保存を求めている。

 ただ、工事を進める独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」は「現在の工事計画では不可能」としており、市も保存に消極的な姿勢を示している。

 防空壕は15か所で、高さ約0・8〜1・6メートル、幅約0・7〜1・3メートル、奥行き1・1〜4・9メートル。昨年7月以降、工事で家屋などを撤去した際に斜面から相次いで見つかった。

 これを受け、市内の五つの市民団体が保存活動を開始。爆心地から約1・2〜2キロに位置し、近くに捕虜収容所があったことから、「被爆した市民や外国人捕虜が避難した可能性が高い」などとして保存の必要性を訴えている。

 今月9日には「銭座防空壕群を保存する連絡会」を結成。合わせて開かれたシンポジウムでは、近くに住む被爆者の女性(90)が、原爆投下後に防空壕で過ごした体験を語った。

 一方、市は、今回見つかった防空壕に被爆の痕跡はなく、捕虜の使用は確認できないと説明。市内ではこれまでに400以上の防空壕が発見されており、「他の防空壕と同じで、残すべき特段の理由はない」としている。現在も工事は進んでおり、4か所が埋めるなどされている。

 連絡会のメンバーは18日、市役所を訪れ、同機構に保存を働きかけるよう申し入れた。20日には機構の九州新幹線建設局(福岡市)を訪問し、保存を求める予定。中村住代・共同代表(71)は「防空壕群は原爆の体験や痕跡を後世に残す貴重な遺構。子どもたちの平和教育のためにも残したい」と話している。(姫野陽平)

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