産経新聞 2018.4.28 07:18

愛媛県今治市の松山刑務所大井造船作業場から受刑者の平尾龍磨容疑者(27)が脱走した事件は、長期の捜索が続く中でゴールデンウイーク(GW)を迎えた。
潜伏先とみられる尾道市・向島(むかいしま)では島外に出る道路で24時間の検問が継続。島の観光施設には事件の影響による渋滞などへの懸念の問い合わせも多い。
不安を抱えながらの大型連休に、関係者は「頑張るしかない」と力を込める。(児玉佳子)

観光潮干狩りで島外から多くの家族連れでにぎわう島南部・向島町の干汐(ひしお)海水浴場では、来場者が1日約130人と、例年より2割程度まで激減。
運営する向島町漁業協同組合によると、連日の渋滞を心配する問い合わせが多数寄せられており、田頭信親組合長(74)は「とくに子供がいる家族は渋滞を心配し、今年はほぼ来なくなった」と肩を落とす。

同漁協は、アサリの不漁で長年潮干狩りを中止していたが、養殖に取り組み、平成25年に潮干狩りを復活させた。
約3センチの大ぶりのアサリが人気で、田頭組合長は「リピーターも増えて軌道に乗ったばかり。1人でもお客さんが来てくれるなら雨が降ってでもやる。頑張るしかない」と話す。

観光客に人気のチョコレート店「ウシオチョコラトル」(向島町)でも事件後、1日の来店客が約30人と事件前から半減した。
同店の栗本雄司さん(34)は「GWは定休日をなくして営業するが、お客さんにおいしいチョコレートを作っていくことしかできない」。
地元特産のランの栽培・販売を行う市の観光施設「向島洋らんセンター」(同)では、渋滞の問い合わせに対して有料の「しまなみ海道」の利用を促している。

事件後、尾道大橋南詰めの道路は朝夕のラッシュ時を中心に検問による激しい渋滞が起き、県警は現在、側道も使った2車線で検問を行っている。
通勤手段をバイクや自転車に切り替える住民もいて、尾道署幹部は「事件当初と比べて、だいぶ渋滞が緩和されているのではないか」と話す。

事件が長期化する中、住民は夜間パトロールなど自主的な活動を続けている。
向東地区区長会の吉原充会長(73)は「もう3週間になるが、いつも気持ちが晴れない。一日でも早く解決し、この生活を終わらせたい」と話した。

潮干狩りの沿岸を眺めて、「頑張るしかない」と表情を引き締める田頭信親組合長=尾道市・向島
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尾道大橋南詰めでは島外に出る車の検問が続いている=尾道市の向島(一部画像を加工しています)
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