昨年4月の全面開業から1年がたつJR名古屋駅の複合ビル「JRゲートタワー」(名古屋市)が好調だ。商業施設「タカシマヤ ゲートタワーモール」を核に若年層を取り込み、来場者数は3千万人を突破。2027年のリニア中央新幹線の開通を見据え、名駅周辺は再開発が進み、着実に人の流れを呼び込んでいる。一方、JRや名鉄などと直結する名駅の利便性の高さから、岐阜県など周辺地域にとっては経済波及効果よりも消費者の流出が進んでいるようだ。
 「消費のストロー現象が見受けられる」。東海財務局の寺田達史局長は名古屋経済圏の現状をこう説明した。東海4県(岐阜、愛知、三重、静岡)の4月の経済情勢は、製造業が好調な愛知で個人消費が増す一方、他の3県は緩やかに持ち直している程度とし、「高島屋の(売り上げの)高い伸びは、名古屋の人だけの消費では説明がつかない。岐阜や三重のスーパーやショッピングモールにまで波及するかを見極める必要がある」と述べた。
 モールは、連絡通路でつながるJRセントラルタワーズの百貨店「ジェイアール名古屋タカシマヤ」の増床店舗で、JR東海と高島屋の合弁会社が運営。売り場面積は3万2千平方メートル広がって計約10万平方メートルとなり、17年度の売上高は2館合算で前年比22%増の1576億円、来場者数は46%増の5509万人に上った。
 若者に人気のアパレルブランド店をそろえ、20〜30代の若年層を引き付けた。ゴールデンウイーク前半の29日も、タワー周辺はベビーカーを押す家族連れやカップルの姿が目立った。ゲートタワーモール事業部長の林田明雄取締役は「今まで名駅になかった専門店のかたまりができたことが大きい」と語る。
 リニア開通を見据え、名駅周辺では15年にJPタワー名古屋と大名古屋ビルヂング、16年にはシンフォニー豊田ビルが相次いで開業。繁華街の栄地区でも大手百貨店の出店計画が浮上、名古屋市内の開発競争が過熱している。
 一方、名古屋周辺地域では、経済波及効果よりも、消費者が流出する逆流効果の方が大きいとの指摘もある。十六総合研究所によると、15年の国勢調査を基に調査した他県に通勤・通学する人口の割合が岐阜県は6・7%と全国で8番目に高い。他県への通勤者は11万1216人で、うち愛知県へが9割超を占める。古池正広リサーチ部長は「栄地区は寄り道になるが、名駅だと気軽に立ち寄れる。帰宅途中の買い物が増えていると考えられる」と分析する。
 岐阜高島屋(岐阜市日ノ出町)の田村晃二営業統括は「JRゲートタワーとは客層が異なる」としつつ「岐阜ならではの商材や地場産品など、名古屋に選別されない店づくりが今後、より重要になる」と話した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180430-00036374-gifuweb-l21
https://amd.c.yimg.jp/amd/20180430-00036374-gifuweb-000-3-view.jpg