http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-43958764

2018/05/01
日本相撲協会は4月28日、東京・両国国技館で「女性と土俵について」を議案として臨時理事会を開いた。しかし、「女人禁制」の方針を見直すか否かの決定は延期された。

日本相撲協会は最近、意識を失って倒れた男性を助けようと土俵に入った女性に土俵から出るよう求めたことを含む、一連の不祥事に直面していた。

女性は伝統的に「不浄」と信じられ、土俵に入ることを認められてこなかった。

日本相撲協会の高野利雄・危機管理委員長は女人禁制について「いろいろと難しい問題」だとして、もっと時間が必要だと述べた。

相撲が批判されている理由

今年4月、京都府舞鶴市の多々見良三市長が、「土俵」として知られる相撲の舞台で挨拶中に気を失って倒れた。
複数の女性が市長を助けるために駆けつけたが、行司から土俵を出るよう要求された。

現地報道によると、女性たちが土俵を下りた後、土俵に塩がまかれるのを複数の目撃者が見たという。塩をまくのは土俵を清めるため取組前に行われる習慣だ。

日本相撲協会は行司の行動について世界的に非難を受け、八角信芳理事長は「不適切な対応」を謝罪した。
しかし数日も経たないうちに、相撲協会は別の女性市長の土俵入りを拒否したとして新たな批判にさらされた。

兵庫県宝塚市の中川智子市長は、同市で開催された興行の前に土俵の上で挨拶できないか尋ねたものの、「伝統を尊重してほしい」と答えられたと報じられた。

報道によると中川智子市長は、土俵脇での挨拶で「女性市長も人間だ」「女性という理由で、土俵の上でできないのは悔しく、つらい」と述べたという。

協会はまた、安全上の懸念を理由に、今年の春季巡業で力士と土俵上でぶつかるちびっこ相撲に女性が参加できないよう定めた。ここ数年は少女も参加が可能だった。

女性が土俵に上がることを拒否される理由

相撲の起源は1000年以上前にさかのぼり、古代からの伝統が今日まで多く維持されている。
英字紙ジャパンタイムズでコメンテーター兼コラムニストを務めていたマーク・バクトン氏は、相撲は日本の宗教である神道と結びつきがあると語る。

バクトン氏はBBCに対し、「日本では相撲は単なるスポーツとは考えられてこなかった。それよりずっと深く日本人の心理に根付いている」と語った。
伝統的には、取組の前には土俵の真ん中に穴が作られた。穴には神道の神主によって勝栗、スルメ、昆布、酒などが入れられた。

神霊への捧げものが中に収められ、穴は閉じられる。そして、邪気を払うため、力士がしこを踏み拍手を打つ儀式をする。
「土俵は神道の神聖な場所と考えられてきた」とバクトン氏は説明した。

神道では伝統的に、女性は月経の血が理由で不浄と考えられており、そのために土俵に入ることを禁じられてきた。
バクトン氏は、あらゆる血が場を汚すと考えられており、男性力士が土俵上で出血した場合も、塩で清められると説明する。
世界中のアマチュア相撲では女性が戦うことができ、実際に戦ってもいるものの、1万1000人を収容する東京の両国国技館にある土俵には上がれず、日本相撲協会が主催する大相撲で戦うこともできない。

方針は変わるのか

相撲協会の尾車親方(相撲の親方は年寄名で知られる)は28日の理事会後に現地メディアに対し、女人禁制の方針は「何百年と」続いてきたものだとし、「1時間では変えられない」と話した。
確かに、日本協会は今、以前ほどの世論に圧力に押されているわけではない。
2000年、当時大阪府知事だった太田房江氏が、優勝力士にトロフィーを贈呈するため土俵に上がることを認めるよう相撲協会に求めたが、要求は却下された。

バクトン氏は、相撲における長年の伝統と、同氏の考えでは日本におけるフェミニズムの意識は限られていることから、相撲協会は方針を変えることはないだろうと考えている。

「相撲協会は、なんらかの他の不祥事が飛び出してきて、現在の問題が立ち消えになるのをただ待っているのだ」とバクトン氏は述べた。
(リンク先に続きあり)

(英語記事 Sumo wrestling: The growing sexism problem in Japan's traditional sport)

世界の相撲大会では女性も戦っている
https://ichef.bbci.co.uk/news/410/cpsprodpb/015C/production/_101084300_gettyimages-821289304.jpg