【マニラ=石橋茉莉】アジア開発銀行(ADB)は5日、マニラで年次総会を開いた。麻生太郎財務相が質の高いインフラの重要性を訴えたのに対し、中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)との連携を求めた。アジアで旺盛なインフラ投資のあり方をめぐり日中が応酬する形になった。

 麻生氏は総会で「質の高いインフラ投資は(相手国の)包括的な成長を持続させる。民間部門の参加を促し、雇用を生む」と効果を強調した。

 これに対し、中国の余蔚平財政副部長は「AIIBや新開発銀行(通称・BRICS銀行)などとの協力を強めるべきだ」とADBが協調融資を増やすよう求めた。さらに「(中国の経済圏構想である)一帯一路など地域の他の協力枠組みとの連携を深めるべきだ」とも主張した。

 麻生氏は会合後に記者団に対し、相手国の開発を支援する国の姿勢に関して「意図的に貸し込んで取り上げるのは不幸だ」と述べた。中国などを念頭に、相手国の債務返済能力を考慮せずに融資する姿勢を問題視したものとみられる。

 麻生氏は4日の会合では新興国に長期資金を供給する新たな制度をつくると表明している。

 一連の会合では米国を念頭に保護主義色の強い通商政策を懸念する議論が相次いだ。総会では中尾武彦総裁が「我々は自由な多国間貿易の維持のため最大限の努力を払う」と強調した。ADB総会は5日で主な会議が終了した。



日本経済新聞 2018/5/5 20:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30137840V00C18A5EA2000/