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5月14日 4時13分
中東のエルサレムをイスラエルの首都と認定したアメリカのトランプ政権は14日、大使館をエルサレムに移転します。これに対し、エルサレムを将来樹立する国家の首都と位置づけるパレスチナは、抗議デモを呼びかけていて、イスラエル軍と激しい衝突が起きることも予想されます。

アメリカのトランプ大統領は、去年12月、エルサレムをイスラエルの首都と認定し、14日のイスラエル建国70年に合わせて、現在別の場所にある大使館をエルサレムに移転します。

移転は、エルサレムにある総領事館を大使館に格上げする形で行われます。13日には、翌日の記念式典に出席するため、トランプ大統領の娘のイバンカ氏や娘婿のクシュナー上級顧問らが到着し、ネタニヤフ首相の歓迎を受けました。

ただ、エルサレムは、パレスチナ側も将来、樹立する国家の首都と位置づけていて、その帰属は、アメリカが仲介する交渉で決めることになっていました。

このため、トランプ政権の対応にパレスチナ側は失望するとともに、反発を強めていて、各地で抗議デモを続けています。

イスラエルの建国に伴って故郷を追われたパレスチナの人たちにとっては、難民となってから70年という節目にあたり、抗議デモが拡大してイスラエル軍と激しい衝突が起きることも予想されます。

新大使館は中間地点

14日からはアメリカのフリードマン大使が、エルサレムで勤務に当たります。新たな大使館の場所は、ユダヤ人地区とパレスチナ人が暮らす地区のほぼ中間に位置し、かつてイスラエルとアラブ諸国の間で行われた中東戦争の停戦ライン上に位置しています。イスラエルの治安当局は、大使館を狙ったテロなどを警戒し、厳重な態勢を敷いています。

米のイスラエル支援 その背景は…

アメリカは1948年、イスラエルが建国された際、最初に国家として承認し、対立するアラブ諸国に囲まれたイスラエルを一貫して支援してきました。

アメリカでは、「イスラエル・ロビー」と呼ばれるユダヤ系の団体が政財界に強い影響力を持ち、「特別な関係の国」としてイスラエルに多額の軍事援助を続けています。

しかし、前のオバマ政権が、イスラエルが安全保障上最大の脅威と捉えるイランとの距離を縮め、核合意を妥結したことから、イスラエルはこれを公然と批判し、関係が冷え込みました。

しかし、トランプ大統領は大統領選挙期間中、エルサレムにアメリカ大使館を移転すると発言し、イスラエル寄りの姿勢を打ち出しました。

去年、大統領に就任したあとも、パレスチナに対して強硬な姿勢の人物をイスラエル大使に起用したほか、イスラエルと将来的なパレスチナ国家が共存する「2国家共存」には、必ずしもこだわらない考えを示しました。

そして、去年12月には、エルサレムをイスラエルの首都と認めると宣言したうえで、アメリカ大使館をエルサレムに移転する方針を明らかにしました。

トランプ大統領に近い娘婿のクシュナー上級顧問は敬けんなユダヤ教徒で、娘のイバンカ氏も、結婚を機にユダヤ教に改宗したことで知られています。

また、アメリカ国内で最大の宗教勢力と呼ばれるキリスト教福音派は、イスラエルを支援することが重要だと信仰しており、トランプ大統領がエルサレムを首都と認める判断をしたのは、秋の中間選挙もにらみ、キリスト教福音派の支持をつなぎとめたい狙いがあったとみられています。

さらに、先月、イスラエルのネタニヤフ首相は核兵器の開発を計画したことはないとしてきたイランの主張はうそだと証明する大量の資料を入手したとして公表し、トランプ大統領に対し核合意からの離脱を含む厳しい対応を呼びかけました。

これも後押しとなり、トランプ大統領は、ヨーロッパなど関係国の反対を押し切る形で、今月8日、イラン核合意からの離脱を表明し、歴代の大統領で最もイスラエル寄りの政策を取り続けています。
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