2018年05月28日 月曜日

 空間放射線量を常時測定する「放射線監視装置(モニタリングポスト)」を巡り、福島県内の自治体が原子力規制委員会の撤去方針に異論を唱えている。東京電力福島第1原発事故から7年余り。「一定の役割を終えた」とする規制委に、地元市長らは「原発事故は継続中」と訴える。「安心感」や「風評」といった問題も絡み、慎重な検討が必要となっている。(福島総局・関川洋平)

◎地元側「可視化で安心感」/規制委「一定役割終えた」

<3分の2が対象>
 「撤去は時期尚早だと思う」。伊達市の須田博行市長は10日、原発事故は続いているとして、撤去に反対の意向を示した。

 モニタリングポストは原発事故後、公園や学校敷地など県内に約3600台が設置された。うち避難区域となった双葉郡など12市町村以外にある約2400台が撤去対象だ。
 規制委が3月に方針を示すと、市民団体が自治体に「国に撤回を働き掛けてほしい」と要望。これを受け、伊達のほか福島、郡山、いわき、会津若松各市や三春町なども「撤去反対」の立場を明らかにした。

 規制委と地元側は設置への考え方が大きく異なる。
 原子力規制庁は「(12市町村以外では)放射線量は落ち着いていて、リアルタイムで見る必要性は薄まっている」と主張。この1年間の平均線量は最も高い県北で1時間当たり0.115マイクロシーベルトで「事故前の全国水準の範囲内」と説明する。
 一部は各自治体に残すため、担当者は「仮に線量が上昇しても適切に把握できる」と語る。

 一方、市民団体や地元自治体は、常に現状を目にできる「可視化による安心感」を重視する。
 モニタリングポストは幼稚園の敷地をはじめ目に付きやすい場所にあるが、計画では福島市は現在の395台が23台に、郡山市は387台が28台になる。住民が見る機会はぐんと減る。
 市民団体の一人は「見えない所で(線量を)測っているから大丈夫と言われても困る。見える場所で測定と表示を続けてほしい」と訴える。

<風評への影響も>
 ただ、観光地などにあるケースについて、風評への影響を口にする自治体トップもいる。
 福島市の木幡浩市長は4月、市民団体と懇談して撤去に反対した上で「(装置が)多過ぎるために風評を生むこともある。安心感と風評の問題は総合的に考える必要がある」と述べた。
 市幹部は「(数十年を要する)第1原発の廃炉完了まで続けるのかどうか、検討が欠かせないのは確かだ」と語る。

 設置を巡っては、全面的な運用を始めた2013年度から5年間で、不具合の現地確認が4000回近くに上ることが判明。撤去によって約5億円の年間運用費を圧縮させたいとの思惑を指摘する声もある。
 規制委側は経費圧縮目的を否定。今後は住民説明会などを通じて理解を求める方針だ。更田(ふけた)豊志委員長は4月18日の定例記者会見で「一気に議論が進んだり了解が得られたりすると考えているわけではない。手順をきっちりと踏むことが重要だ」と強調した。

[放射線監視装置(モニタリングポスト)]国が東京電力福島第1原発事故後に設けた。福島県内の約3600台のうち約3000台は子どもが集まる場所の空間線量把握が目的で公園や学校敷地などに、残る約600台は県内全域の中長期測定を狙いに5キロメッシュで配置。前者のうち避難区域外の約2400台について、国は2020年度末までに撤去する方針。他に自治体独自の装置がある。

https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201805/20180528_63008.html