http://www.bbc.com/japanese/44275816

2018/05/28
ドナルド・トランプ米大統領が一旦中止を通告した北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との首脳会談をめぐり、トランプ氏は27日午後、米政府交渉団が事前協議のために北朝鮮入りしたとツイートした。

トランプ氏はツイッターで、「我々の米国チームが金正恩と私の首脳会談の調整をするため、北朝鮮に到着した。北朝鮮には素晴らしい可能性があり、いつの日か経済と金融の大国になると、自分は心から信じている。金正恩も同意している。実現する!」と書いた。

米国代表団の責任者は、スン・キム元駐韓大使とみられる。協議相手は、崔善姫(チェ・ソンヒ)北朝鮮外務次官のもよう。

実務者レベルで、首脳会談の議題を調整するものと思われる。
実現すれば歴史的なものとなる米朝首脳会談は、6月12日にシンガポールでの開催が予定されてきた。トランプ大統領が24日に会談中止を発表した時点と比べれば、実現の可能性が高まってきたものの、米朝双方の隔たりはまだ大きい。トランプ氏は、合意が得られそうになければ自分は出向くつもりはないと、態度を明示している。

トランプ氏は24日、北朝鮮の「強烈な怒りとあからさまな敵対心」を理由に首脳会談を中止すると、金委員長あての書簡で通告した。
しかし、北朝鮮が「まったく予想外」だと遺憾の意を示し、「いつでも」対話の用意があると声明を出すと、トランプ氏は25日になって、北朝鮮と協議していると記者団に述べた。ツイートでも、北朝鮮と「生産的な話し合い」が続いていると書き、予定通り6月12日にシンガポールで実施する可能性に言及した。

さらに26日には板門店の北朝鮮側で、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金委員長が急きょ、2度目の首脳会談を行い、米朝会談の実現可能性を協議した。文大統領によると、金委員長は「朝鮮半島の完全な非核化に向けた強い意思を、あらためて明示した」という。
北朝鮮の国営・朝鮮中央通信(KCNA)によると、金委員長はシンガポール・サミット実現のため文大統領が「大いに努力を重ねてきた」ことに感謝し、米朝首脳会談の実現に向けた「確固たる意思」をあらわにしたという。

米国は北朝鮮による大量破壊兵器の完全放棄を求めており、制裁解除や経済支援はその後に提供する方針とみられる。一方で、北朝鮮が「朝鮮半島の非核化」で何を意味するのかは、はっきりしていない。
金委員長は、自国がひとつ譲歩するごとに米韓も、制裁解除や在韓米軍削減など、何らかの譲歩をするという段階的アプローチを求めていると示唆してきた。
トランプ氏はこの方法を受け入れる可能性を排除していない。

北朝鮮は2006年以降、6回の核実験と度重なる大陸間弾道ミサイル発射実験を重ねてきた。理論上は、米国本土を核攻撃できる状態に達したが、長距離ミサイルに搭載できる核弾頭の小型化に成功したかどうかは、専門家の間でも意見が分かれている。

国際社会は北朝鮮の輸出を大幅に制限し、北朝鮮への石油精製品の年間輸出量を最大90%削減する経済制裁を相次ぎ発動してきた。今年になって金委員長が融和姿勢を示し、韓国で開かれた冬季五輪に選手団のほか自分の妹を含む代表団を派遣するなど、韓国や米国との交渉に意欲を見せてきたのは、一連の経済制裁による圧力が効いているからではないかとの見方もある。

北朝鮮はさらに、国家としての存続や体制維持の確約を求めている。
北朝鮮は、米国のジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)やマイク・ペンス副大統領が「リビア方式」に言及したことに強く反発し、これがトランプ氏による会談中止の通告につながった。

ペンス副大統領は21日、金委員長が米国との取引に合意しなければ、北朝鮮は「リビア方式が終わったように終わるしかない」と発言していた。これは、2003年にリビアのカダフィ政権が制裁解除と引き換えに大量破壊兵器の開発放棄を約束し、国際機関の査察を受け入れた後、2011年に政権が崩壊し、最高指導者のカダフィ大佐が殺害された経緯を意味するものと広く受け止められた。
(英語記事 US and North Korea preparing Trump-Kim summit)