【5月29日 AFP】オーストラリア東海岸沖にある世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)は過去3万年で5回にわたり消滅寸前の危機から回復したとする研究結果が28日、発表された。グレートバリアリーフは現在、海水の温度と酸性度が上昇する中で深刻なストレスにさらされている。

 今回の研究結果はグレートバリアリーフがこれまで考えられていたより大きな回復力を持つ可能性があることを示唆している一方で、今日ほど猛烈な脅威に直面したことはこれまでに一度もなかった可能性が高いと、研究チームは指摘している。

 英科学誌ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)に掲載された論文の共同執筆者で、豪シドニー大学(University of Sydney)のジョディ・ウェブスター(Jody Webster)氏は「現存する多くのストレスと近い将来に生じると予測されるストレスによって引き起こされる変化のペースに耐えて生き抜く能力が、現在の状態のグレートバリアリーフにあるかどうかについては重大な懸念を抱いている」と話す。

 グレートバリアリーフはこれまで環境の変化に対処するために、海水位が上昇傾向にあるか下降傾向にあるかによって海の方か陸の方へ海底を移動してきたことが、今回の研究で分かった。

 研究チームは海底16か所で掘削した岩石コアから得られた化石データに基づき、グレートバリアリーフが年に20〜150センチ移動できたことを明らかにした。

 環境的な難題の集中砲火を浴びている現在の状況に耐えるには、この速度では不十分かもしれない。

 グレートバリアリーフが「これほどのペースで進行するSST(海面水温)と海水酸性度の変化に直面したことは恐らくないだろう」と、ウェブスター氏はAFPの取材に語った。変化のペースは「現在、そして将来の予測においても以前よりはるかに速い」という。

 世界遺産に登録され、数百万の観光客が訪れるグレートバリアリーフは現在、サンゴ白化現象に連続して見舞われる苦境にあえいでいる。白化は気候変動に関連する海水温上昇が原因で起きる。

 ウェブスター氏と国際チームは、グレートバリアリーフが陥っている現在の苦境をより長期的な背景の中でとらえたいと考えた。

 過去3万年間に及ぶ大陸氷床の拡大と縮小によって生じた変化にグレートバリアリーフがどのように対応してきたかを、研究チームは10年以上にわたり調査した。

■魚の「育児室」

 今回の研究は、約2万1000年前に最終氷期間の最寒冷期(最終氷期最盛期、LGM)に入る以前からの期間を対象としている。

 当時の平均海水位は現在より約120メートル低かった。

 LGMに至るまで海水位が降下したのに伴い、約3万年前と2万2000年前に2回の「壊滅的大量死」事象が発生したことを、研究チームは発見した。

 これらの事象はサンゴ礁が空気にさらされたことが原因で起きた。その後、生き残ったサンゴが回復を図るために海の方へ徐々に移動した。

 LGMを過ぎて氷床の融解が進むにつれて、今度は海水面上昇に起因する大量死が1万7000年前と1万3000年前に2回発生したことを、研究チームは明らかにした。これらのケースでは、サンゴ礁は陸の方へ移動した。

 そして約1万年前に5回目の大量死事象が起きた。これは海水面の上昇と同時に大量の堆積物が海に流出したことが原因とみられる。

 ウェブスター氏によると、地球が新たな氷河期に向かうと考えられているため、グレートバリアリーフは「過去の地質学的パターンに従うとすれば、いずれにせよ今後数千年以内に再び死滅寸前に追い込まれる可能性が高い」という。

 「だが、人為的な気候変動がこの死を早めるかどうかは、現時点ではまだ分からない」

 海洋生物種の約4分の1のすみかとなっているサンゴ礁は、多くの魚種の稚魚が育つ「育児室」の役割も果たしている。(c)AFP

2018年5月29日 13:11
http://www.afpbb.com/articles/-/3176396
http://www.afpbb.com/articles/-/3176396?page=2

グレートバリアリーフのサンゴ礁(2014年11月20日撮影)
http://afpbb.ismcdn.jp/mwimgs/a/5/1000x/img_a5868f2a0e581be658c2acf9e1a1f293222696.jpg