宇宙航空研究開発機構(JAXA)は29日、国際宇宙ステーション(ISS)から超小型衛星を放出する事業を三井物産と宇宙利用ベンチャーのスペースBD(東京・中央)に開放すると発表した。超小型衛星はインフラ監視や通信向けに世界で需要が広がり、年間約300基が投入されている。衛星を載せて打ち上げるロケットビジネスへの国内外の企業の参入が相次ぐなか、宇宙空間にもビジネスの舞台が広がってきた。

記者会見で握手する(左から)スペースBDの永崎社長、宇宙飛行士の若田光一さん、三井物産の岡本氏(29日午後、東京都千代田区)

宇宙飛行士の若田光一JAXA理事は「民間ならではの発想で独自のビジネスにつなげてもらいたい」と語った。

国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」から超小型衛星を放出する様子(5月11日=JAXA・NASA提供)

超小型衛星は重さが100キログラム以下で、1トンを超える従来の衛星よりはるかに小さい。カメラや民生部品が進化し、数百億円かかった製作費も数億円で済む。

JAXAは国産ロケットで打ち上げる以外に、2012年から日本の無人輸送機「こうのとり」や米国の無人輸送機に積んでISSに届け、日本の宇宙実験棟「きぼう」の装置で宇宙空間に送り出している。

きぼうからは、フィリピンやブラジルといった国々や国内大学が地球観測用など向けに作った28基を投入してきた。

今後は、JAXAが有償で放出してきた事業を2社のビジネスに委ねる。JAXAは輸送や宇宙での作業には関わるものの、放出事業は国際協力目的などに限る方針だ。

きぼうからの放出は宇宙飛行士が準備し、地上からの指令で実行する。ロケットに載せて打ち上げるよりも衝撃が少ないのが利点とされる。

2018年5月29日 16:43
日本経済新聞
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO31099390Z20C18A5000000?s=1