住民資金833万円着服 鯖江市教委、公民館元職員を懲戒免職
2018年6月2日
http://www.chunichi.co.jp/article/fukui/20180602/CK2018060202000021.html

 鯖江市教育委員会は一日、同市吉川地区の住民が地区史編さんのため積み立てた資金など計八百三十三万三千円を着服したとして、同地区の吉川公民館で会計管理をしていた臨時職員の女性(47)を懲戒免職処分にしたと発表した。処分は五月三十一日付。女性は全額を返済したが、担当していた他の会計にも不明金があり、住民でつくる区長会は鯖江署に被害届を出す方針。
 市教委によると、女性は二〇〇四年十月から同公民館で勤務。区長会は地区史編さんのため、一一年度までに約二百五十万円を積み立てて口座の管理を公民館に委託したが、女性は複数回にわたって引き出し、口座を解約した。
 区長会は一二年度に編さん委員会を設立。地区内の二千二百世帯が払う区費などから毎年六十万円を捻出したが、女性は途中で使用した経費以外を口座に入金せずに着服。一部住民が前払いした購入費約二百八十万円も着服した。市教委によると、女性は「家族が病気になり、生活費に入れてしまった。申し訳ない」と話している。
 女性は今年四月に別の公民館に異動。吉川公民館長が同月十六日に地区史の印刷代の支払いのため女性に通帳の有無を問い合わせたことで発覚した。女性は計七会計を担当しており、地区社会福祉協議会事業費についても調査したところ、「敬老会補助」といった架空の事業を設けるなどして六十八万円を着服していたことが分かった。
 一日に会見した辻川哲也教育長は「地域の皆さまの信頼を裏切り、誠に申し訳ない」と謝罪し、再発防止策を説明。市教委は、事務部長ら幹部三人を減給十分の一(一カ月)とし、教育長も近く処分する。
 (梶山佑)
◆「信頼損なわれた」
 「地域との信頼関係と協力関係を大きく損なうもの。重く受け止めている」。辻川教育長は会見で、公民館という地域社会の核での不祥事を陳謝した。
 女性は、市が正規職員削減の一環で一九九四年に導入した臨時職員「公民館社会教育専門員」だった。同じ公民館に十三年留まった理由として、市教委は「住民から信頼され、慰留されていた」と説明。市教委は再発防止策として、公民館職員は三〜五年周期で異動させるとした。
 吉川公民館は、五時間勤務の館長と女性、日給の非正規職員の三人で主に運営。編さん委員会は女性を信頼して通帳と印鑑を預けていた。市教委によると、こうした住民組織の会計について公民館が市教委に報告する義務はなく「組織自身で管理するか、預ける場合は定期的に確認してほしい」とする。
 吉川地区史は五百四十ページに及ぶ大作。豊かな自然に訪れるコウノトリや、十四世紀に朝鮮半島で造られた金銅仏像を鮮やかに活写した写真を納め、旧石器時代からの歴史や文化、植生を詳述している。区長会の小沢邦嗣会長(61)は取材に「信頼していた職員で驚いている。住民のお金を使われ、大変遺憾。代表者として地区民に申し訳ない」と肩を落とした。
 (玉田能成、梶山佑)