大阪市を廃止して4つの特別区に再編する「大阪都構想」の制度設計を話し合う法定協議会が長期化する中、都構想に反対の公明党内に、住民投票をせずに対案の「総合区」制度へ移行するシナリオが浮上している。都構想推進派の大阪維新の会の松井一郎代表(大阪府知事)は「来春の統一地方選との同日実施」を模索するが、来年は夏に参院選が控えていることもあり、協力を求める公明が同意する可能性は低い。

 公明は、大阪市を残したまま現在の行政区の権限を格上げする総合区の導入を目指す。維新とは制度改革に積極的という点では考え方が一致。ともに府市両議会で過半数に満たないことから、特別区と総合区の制度設計を協力して進めることで同意した。吉村洋文市長(維新政調会長)が総合区案づくりを進めることと引き換えに、公明は特別区の議論に応じている。

 維新は、住民投票の実施でも、特別区が否決された場合に総合区へ移行することを市議会で先に議決しておくことを条件として、公明の協力を求める方針だ。

 公明の市議団幹部は「特別区の精緻な設計書ができれば住民投票の実施の可否を検討する」と話すが、党内には「特別区への賛否で市民を二分するような住民投票はしたくない」という意見が根強い。

 そこで浮上するのが、総合区は市長が市議会へ提案し過半数の議員が賛成すれば実現できるという手続きを考慮し、来年4月の統一地方選の結果を待つシナリオだ。市議選で総合区に賛成の自民党と公明で過半数を獲得できれば、来年12月に任期満了となる市長選も自民、公明の枠組みで勝利することで、住民投票なしで総合区を実現する道筋を描けるようになるという。

 公明の府議団幹部は「それは維新が許してくれないだろう」と慎重だが、自民の花谷充愉府議団幹事長は「公明と自民で総合区の制度設計をしていくのが自然な流れ」(4月25日の法定協)と主張する。総合区に関する公明と自民の考え方にも合区の可否などで隔たりがあり、公明は事態の推移を見極めている。

 一方、来春の統一地方選で維新が勝利した場合、公明のある議員は「知事の任期が満了する来年11月までの住民投票の実施に応じざるを得ない」との見通しを示す。具体的には「来年7月に予定される参院選を終えてから」になるという。

 法定協は今後、都構想に移行した場合の経済効果、府や4特別区の行財政プランの実現可能性が議論される。維新、自民、公明の思惑が交錯する中、住民投票見送りの可能性も含めて成り行きが注目される。



産経WEST 2018.6.3 07:50
http://www.sankei.com/west/news/180603/wst1806030010-n1.html